自動車各社で広がる一時帰休、生産停止が長期化
日本の自動車メーカーが工場の従業員を一時的に休ませる「一時帰休」を相次いで実施する。国内外で新型コロナウイルス感染症拡大が収束に向かわず、工場の稼働休止が長期化しているためだ。部品サプライヤーに同様の動きが波及している。また日本製鉄は自動車生産用鉄鋼需要などの減少に対応し一時休止を決めた。自動車は産業の裾野が広いだけに、周辺産業に影響が広がる可能性もある。
日産自動車は栃木工場(栃木県上三川町)で従業員を一時帰休とする方向で検討する。同工場は5月1日までに10日間の生産停止を計画する。
三菱自動車は水島製作所(岡山県倉敷市)と岡崎製作所(愛知県岡崎市)、同社生産子会社パジェロ製造(岐阜県坂祝町)の工場で勤務する従業員約6500人を対象に一時帰休させる。最長30日まで生産を調整する。一時帰休の対象期間などが拡大する可能性があり、同期間の給与について労働組合と調整を始めた。雇用調整助成金の申請なども検討する。
マツダは、本社工場(広島市南区)と防府工場(山口県防府市)において3月28日から4月30日までの間に13日間操業を休止し、8日間は昼勤のみとする生産調整を実施している。休業の対象となる生産現場の従業員、期間従業員には給与の90%を支払う。対象人数は明らかにしていない。
米国を中心に海外工場でも雇用を調整する動きが相次ぐ。トヨタ自動車は米国など北米地域で有給休暇と一時帰休を組み合わせるなど調整を図る。ホンダも米国の工場で1万人規模を一時帰休する。
部品メーカーにも影響は広がっており、ヨロズはすでに顧客の動向に合わせて工場の休業や一時帰休などを対応中。工場の稼働減を受けて雇用調整助成金の申請を月内にも行う。申請計画書の作成に着手し、部材を調達する取引メーカーにも申請を促した。「申請して助成金を受け取るまでも時間が要するため早急に取りかかる」(同社幹部)とする。3月の影響分などもさかのぼって申請する考え。
自動車業界ではリーマン・ショックや東日本大震災の後には、期間従業員の契約を更新しない「雇い止め」が相次いだ。感染問題がさらに長期化すれば、今回も同様の動きが活発化しかねない。遠藤功治SBI証券企業調査部長は「工場を稼働できないままでは現金だけが流れる。
大規模工場を抱える自動車メーカーはその規模が大きい。資金繰りが難しくなった企業から順に、背に腹は変えられず(解雇など)厳しい判断が出てくるだろう」と分析する。関連産業への影響も懸念される。すでに日本製鉄は、自動車生産用鉄鋼需要などの減少に対応し、高炉2基を一時休止し、同社粗鋼生産量の1割強の減産を決めた。並行して本社や製鉄所、研究所などの全従業員(同社単独)約3万人を対象とする一時帰休も実施する。
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