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【新型コロナ】マスクメーカーが製造設備購入を即断できない事情

新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う安倍晋三首相の緊急事態宣言発令により、都道府県知事が各種施設の制限・停止の措置ができる一方、外出時の必需品となったマスクは依然品薄が続く。そんな中、おむつ製造機が主力の瑞光がマスク製造機の“優先製造”の方針を示した。ただ顧客のマスクメーカーは機械購入を即断できない事情もある。

「供給枚数が圧倒的に足りていない」―。瑞光の和田晃司コーポレート統括部長がこう指摘するように、スーパーやドラッグストアの店頭では開店前からマスクを買い求める人の行列ができ、陳列されても即完売となる。

瑞光のマスク製造機の価格は仕様により異なるが、1台2億円前後(消費税抜き)。耳に掛ける部分はゴムひもでなく、鼻や口を覆う不織布と一体化したマスクを1分間に600枚以上生産できる。ゴムひも型のマスク製造機は同100枚程度とみられる。新型コロナの感染拡大の影響が騒がれ始めた2月、国内で1台の受注が決まった。「過去に例がない1カ月半で完成させた。現在は試運転中」(和田部長)と4月中に納入する計画だ。

ただマスク製造機は「(マスク形状により)特許関連の縛りが多い」(和田部長)。安価な中国製マスクが出回る中、顧客と仕様を徹底して詰める高額な機械が注目される場面は少なかった。

もうひとつは新型コロナの収束時期をどう見るか、というマスクメーカー側の事情もある。受注した1台は“突貫工事”で仕上げたが、おおむね納品まで3―4カ月は必要。出荷まで6―7カ月程度を要するおむつ製造機に比べると優先的な製造体制を敷くが、協力会社が緊急事態宣言を受けて休業すれば2月受注機同様の納入スピードは見込みにくい。

足元は改善の兆しが見えないマスク不足だが、企業のテレワーク導入や出勤停止で在宅率が高まれば、需給は改善するとの見方もあり、マスクメーカーの設備投資も思案のしどころだ。

ジレンマを抱えつつ、瑞光はこれまで街中で着用する文化がなかった欧米などで、マスク着用機運が高まることを注視する。製造機が「海外からの引き合いが受注につながるケースもある。今後は海外でも相当数のマスクが必要」(和田部長)とみる。

国内ではマスク製造に参入する動きが相次ぐが「お客さまも2億円の投資に対するリターンのさじ加減を見通しにくいはずだ」(同)。顧客の事情をおもんぱかりつつ、瑞光はマスク製造機生産に力を注ぐ。

(取材=大阪編集委員・林武志) <関連記事>
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