【新型コロナ】欧米「マスク」習慣化見据え…三井化学が不織布の設備増強検討
三井化学は、マスク材料などに使われるメルトブローン不織布の設備増強の検討に入った。1月に生産能力を従来比1・5倍に拡大したばかりで、フル生産が続く。アジアに加え欧米でもマスク着用が習慣化するなどの現状が続けば、新設備は3年以内の稼働も視野に入れる。具体的な規模や時期、投資額はマスク以外の市場動向も含めて分析して決める。
メルトブローン不織布は、フィルター機能を担う極細繊維でできた目の細かい不織布。三井化学は完全子会社のサンレックス工業(三重県四日市市)に1系列設備を増設し、1月に営業運転を始めたばかり。新型コロナウイルス感染拡大により、マスク着用習慣のなかった欧米でも需要が急増している。
橋本修社長は「新型コロナ感染拡大の厳しい状況の後、(マスク着用習慣など)感染症への考え方も変わるだろう」と、コロナ収束後の変化を注視する。
同不織布はマスクのほか、手術用ガウンや不純物を除去する産業用フィルターに使われる。三井化学は新型コロナ以前、需要のおう盛なフィルター中心に事業拡大を図っており、マスクの比率は低かった。新設備の稼働はフィルターなどの市場動向も考慮する。素材の生産設備は投資決定から稼働まで時間がかかり、数年先の市場を見極める必要がある。
足元の需要急増には、「既存設備を目いっぱい回す」(橋本社長)とし、対応を急ぐ。一方、衛生材料向け不織布の主要市場はオムツ。直近は買いだめの影響でオムツ向けの生産も上向きだが、需要先食いの見方が強い。不織布は製造方法などの違いで衛生材や自動車シートや農業用シート、フィルターなどに使われ、市場は全体的に拡大傾向にある。旭化成や東レ、帝人などが取り組む。
日刊工業新聞2020年4月6日