車両ごとに大気影響を“見える化” 環境改善につながるか
人工知能(AI)ベンチャーの米アバンティR&D(カリフォルニア州)と電気通信大学は、大気汚染物質を放出する通行車両の種類を推定し大気への影響を“見える化”する技術の実証実験を4月にもデンマークで始める。車種の識別や速度計測を行うAI交通カメラと、粒子状物質(PM)2・5を検知する環境センサーを組み合わせた装置を道路に設置。大気に及ぼす影響を各車両で定量化できると期待される。
期間は2022年12月までの約3年間。AI交通センサーと環境センサーを一つの端末システムに搭載し、システム内での処理後テキストデータにしてサーバーにアップロードできるシステムは初めてという。
街灯や電柱などの既存のインフラに同装置を5―10台設置。データ収集や解析を実施し、特定の場所と時刻での大気汚染物質の排出量を通行車両別に表示するなど、交通状況と大気汚染の関連を可視化する。関連データを利用し、交通量が少なく汚染物質が多い場合にディーゼル車が多いと推定することで、生活時間帯での迂回(うかい)や倉庫の新設の制限など、地域ごとの交通対策を提案できる。
アバンティR&DのAI交通カメラは、車種の識別や速度の計測、台数の計測などをカメラ内のAIがリアルタイムに処理してテキストデータに変換し、交通情報を収集する。さらに普通自動車やトラック、オートバイなどの各移動体に匿名の識別符号(ID)を付け、センサー間の移動時間や移動経路を計測できる技術を備えている。
一方、電通大が開発したスマートフォン接続型モバイル環境センサーは、PM2・5とPM10を計測でき屋内外の環境測定に使われている。実験期間中に二酸化炭素(CO2)や二酸化窒素、気圧、気温、湿度、音などの計測機能を付加する。移動体と大気汚染の関係だけでなく、地域の住みやすさの定量評価やその裏付けとなるデータを収集する。