テレワーク成功のコツは「仕事をきちんと評価できる文化」、平時から試すべし
アステリアは、会社の枠を超えたテレワークの推進など、働き方改革の先駆企業として注目されている。社内実践では「猛暑テレワーク」や「豪雪テレワーク」などをいち早く導入。社外連携では2019年に、首都圏に本社・事業所を構える企業有志とともに「TDMテレワーク実行委員会」を立ち上げ、働き会改革を通じて都心の交通混雑緩和を目指す活動を社会全体へと広めている。(編集委員・斉藤実)
情報共有ツールを主力製品として持つアステリアにとって、テレワークは自社製品の活用効果を試す実証の場でもある。長沼史宏広報・IR室室長は「テレワークは緊急時だけでなく、平時からいろいろと試すことが必要だ」と指摘する。
今回の新型コロナウイルス騒動でも慌てることなく、テレワークが日常となっている状況下で、一歩先を行く打ち手を講じた。2月27日に国内外の全従業員に対し、毎朝出社前の検温で37・5度以上の発熱があったときには「体調回復を第一」として、テレワークを含む就業を禁止とする施策を通達した。
さらに、年度末で有給休暇の残存数が少ない社員でも安心して休養できるように、発熱に伴う就業禁止時には有給休暇を使うことなく、出勤扱いで休養を取れるようにした。
このほか、20人以上のイベントへの参加や主催の禁止や、社外との打ち合わせや商談をオンラインに変更する取り組みも勧奨した。期間は3月13日まで。その後は状況次第で再度判断するという。
テレワーク成功のこつについて、長沼室長は「社内にいてもテレワークでも仕事をきちんと評価できる文化をどう作り上げるか。そこに課題認識を見いだせるか否かが鍵となる」と語る。
15年から始めた猛暑テレワークは、最高気温35度C以上が予想される日には、無理な出勤を強いずに自宅などでのテレワークを推奨する。毎朝5時に気象庁が公表する最高気温予想を入手し、朝5時半に社員のスマートフォンに対してプッシュ通知でテレワーク推奨を連絡する。
同様の考え方に基づき、16年には「豪雪テレワーク」も始めた。降雪や台風などにより、交通混乱が見込まれ、混雑に社員が巻き込まれそうな時はリスク回避でテレワークを推奨する。
TDMテレワーク実行委員会の賛同企業は現在、27社。直近の活動では、東京都が推進する冬の「スムーズビズ」の期間に合わせて、1月27日に合同テレワークを実施した。同日参加したのは賛同各社でテレワークの推進役となる人事部や広報担当に加え、見学に訪れた都庁の職員を含む40人弱。「ふるさとテレワーク」の実証実験で連携する秋田県仙北市役所ともテレビ会議でつなぎ、地方創生を切り口に、テレワークの可能性や課題についても意見交換した。
場所や時間にとらわれないテレワークは就業機会の創出にもつながる。「多様な能力を持つ人々が活躍できる社会の受け皿として、テレワークは有望だ」(長沼室長)と語る。