ニュースイッチ

炭素繊維を糸状に加工できる装置、「CFRP」の成形自由度が大きく向上へ

3Dプリンターの原料供給など新しい用途も想定

垣堺精機(埼玉県小鹿野町、垣堺正行社長、0494・75・3310)が、炭素繊維を糸状に加工できる装置を実用化した。一般の糸と同じく多様な形に編めるので、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)の成形自由度が飛躍的に向上。高価な炭素繊維を効率的に使えるようにもなる。さらに3次元(3D)プリンターの原料供給など新しい用途も想定している。

「糸にできたのは世界初。炭素繊維がさらに普及する」。垣堺正男会長は力を込める。これまでは束状の炭素繊維に樹脂を含ませてシート状にしたり、棒状にしたり、成形するのに制約が多かった。糸にすることで編んでつくれるモノなら、ほぼすべてを製造できる。極細の糸を使えば成形品をより薄くでき、高価な炭素繊維の使用量も無駄なく最適化できる。

例えば、糸と熱硬化性樹脂の線材を一緒に巻き、編んだ織物を加熱すれば、簡単にCFRP成形品ができる。「最近、話題の厚底シューズはソールのカーボンプレートで反発力を高めているそうだが、靴全体を炭素繊維でつくれるようになる。もっと速く走れるかも―」(垣堺会長)と冗談交じりに説明する。

さらに、3Dプリンターに樹脂などの原料を供給するフィラメントの芯線にすることも提案中。特に、樹脂に複数の金属材料を混ぜるパターンで効果を発揮するという。「金属材料の線材と一緒に巻いて芯線にすれば、常に配合比率を一定にしてノズルから吐出できる。粉状の材料だと混ざらない原料も糸状なら可能になる」(同)と強調する。

他方、垣堺精機の地元特産の伝統織物「秩父銘仙」にも挑戦する。ちちぶ銘仙館(秩父市)に依頼し、伝統的な織機でも織物に加工できることを確認した。最新の3Dプリンターから伝統工芸まで新旧を“織り交ぜ”、ドイツなどの海外を含んだ市場の創出に挑む。

(取材=川越支局長・大橋修)
<関連記事>
金属積層造形の技術はここまで進化している!
日刊工業新聞2020年2月6日

編集部のおすすめ