デジタルサイネージを進化させた大日本印刷の苦い思い

自然エネルギーを利用した仕組みを開発

 大日本印刷がデジタルサイネージ(電子看板)を活用した災害・防災情報の提供に取り組んでいる。増加する訪日外国人客(インバウンド)向けの多言語による情報提供や、音声と映像を組み合わせた新しいシステムを開発。自治体や公的機関を中心に提案を進めている。

苦い思い


 「本来なら停止してはいけないのに、停止してしまった」。大日本印刷ABセンター配信ビジネス推進グループの国生正博グループリーダーはそう振り返る。2011年3月11日に発生した東日本大震災では、防災情報を流すはずのデジタルサイネージが計画停電で機能を停止。苦い思いを味わった。

 こうした事態を受け、自然エネルギーを利用したデジタルサイネージの開発に着手。13年に太陽光発電と風量発電、商用電源を併用した低消費電力のデジタルサイネージを商品化した。

 19年2月には新宿御苑に商用電源が不用で、災害発生時に太陽光発電のみで稼働する「環境配慮型屋外液晶デジタルサイネージ」の実証実験を開始。AGCの高輝度液晶「インフォベール」を用い、リチウムイオン蓄電池により日照がなくても3日間は稼働可能。緊急地震速報の情報を5カ国語(中国語の繁体字と簡体字を含む)で表示する。

 要望に応じて他の災害情報も提供可能なほか、カメラや放送波を組み合わせた多機能化にも対応可能。カメラを併用すれば、災害時の設置場所の状況を映像で知ることもできる。

 こうした設備は平時の利活用が課題だが、多言語で提供する園内の見どころマップなどが好評で、「自治体からの受注も来ている」(国生グループリーダー)という。

新たなシステム


 デジタルサイネージと音声を組み合わせた新たなシステムも提案中だ。放送機器や音響機器を開発・製造するTOAと連携し、緊急速報や災害放送の音声に埋め込んだ信号を認識し、ディスプレーに表示するコンテンツを瞬時に避難情報に切り替える。デジタルサイネージの課題である「瞬時のコンテンツの切り替え」(大日本印刷ABセンターの岡田昭彦氏)を音声を使って自動で行う仕組みだ。

 1月には神戸ハーバーランドセンタービル(神戸市中央区)で行われた津波避難訓練に提供して実証実験を実施。地下1階に設置した大型のデジタルサイネージが、TOAが処理した津波情報を受けて避難指示のコンテンツを素早く放送した。音声と映像を組み合わせることで、「目や耳の不自由な方でも災害情報を瞬時に知ることができる」(同)。

 国内では気候変動による豪雨や台風などの災害が増加し、東南海地震の危険性も叫ばれている。その一方、政府がインバウンドの拡大を進め、20年に東京五輪・パラリンピック、25年には大阪・関西万博と大規模なイベントが続く。大日本印刷ではデジタルサイネージについて、国籍を問わず、障がい者でも確実に災害情報を入手できる手段として提案していく方針だ。

日刊工業新聞2019年4月29日

  

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