役員報酬に「ESG」反映の動き広がる、中長期で社会的価値を高めよ!
ESG(環境・社会・企業統治)の達成度合いを役員報酬の評価に反映させる動きが広がっている。投資家らがESGの取り組みを投資の評価基準として重視している中で、役員報酬に反映させることで企業としても本気で取り組む姿勢を示すとともに、実効性を高める狙いがある。中長期的視点でサステナブルな経営のためにも、採用する企業は増えていきそうだ。
「短期の財務目標達成は年次賞与に反映できたが、中長期の社会的価値向上を反映するものがなかった」。アサヒグループホールディングス(HD)は中長期の企業価値向上に向け、社会的価値を高めるための指標としてESGを役員報酬制度に反映する仕組みを3月に導入した。中期(3年)賞与に財務達成6割、社会的価値評価4割を反映する。判断基準は第三者機関の評価など複数のインデックスを用いる。
戸田建設も業績連動報酬の条件を一部改定し、2019年度から二酸化炭素(CO2)削減の年度目標の達成度を連動させた。「ESGを推進するエコファースト企業として、環境保全をはじめ持続可能な社会を構築する取り組みを推進するために導入した」という。長期CO2削減目標に関連づけて、設定した年度目標の達成度合いを業績連動報酬に反映させ、長期目標達成の活動推進を目指す。
17年度の役員報酬制度改定で、中長期業績連動報酬の判断項目に第三者機関によるESG評価を加えたのがオムロンだ。同報酬の10%に影響する。社外の目線を加えることで「『事業を通じて社会的課題を解決し、よりよい社会をつくる』という企業理念を意識した経営が従来以上に浸透できた」と効果があったという。
コニカミノルタも17年度から役員報酬の決定プロセスにESGの観点を盛り込んだ。数年ごとに役員報酬の体系を見直しており、環境や社会への取り組みをより事業や経営に絡めるため、各役員の担当事業の評価項目にESGなど非財務指標に関する取り組みを組み込む形を採用した。
CSRのコンサルティングを手がけるクレアンの伊藤雅和コンサルタントは「非財務の指標としてESGの目標を取り入れるのは良いことで、20年度には導入企業がさらに増えていくだろう」としつつも、「(ESGの)目標数値ありきではなく、会社としてきちんと長期的戦略・ビジョンを定めることが大切だ」と指摘する。