「ぷよぷよ」は「テトリス」のよさを反転させて生まれた

連載・発想のスイッチの入れ方#02/ゲーム作家・米光一成

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アイデアは常に出せる

―米光さんご自身には発想力を磨くための習慣はありますか。
 (ぷよぷよを開発したときのように)キーワードの書き出しは意識してことあるごとにやっています。あと一つ大きいと思うのは(ゲームの企画を手がけ始めてから)すべてをアイデアで解決しようと決めた時があるんです。例えば腹が立つ相手がいても怒るのではなく、この人はなぜこんなことをするのかを徹底的に考えて理由について仮説を立てて相手の立場に立って理解して怒りを静めたり。それからはずっと(アイデアを生む)素振りをしているような感じ。常にアイデアを出せる状態です。

―常にアイデアが生まれる中では使えるものと使えないものがあると思うのですが、使えるアイデアが浮かぶ時はどんな時ですか。
 (傾向は)ないです。絵が上手な人が急にド下手になることはないですし、絵が上手な人に絵がうまく描ける時はどんな状態ですかとは聞かないですよね。それときっと同じ。常に一定のクオリティーは出せます。ただ、仮によいアイデアが出せる時と出せないときの差があるとしたら「材料」です。

―というと。
 自分が詳しくないテーマについてよいアイデアを出せと言われても難しい。知識や現場感みたいなものは必要です。詳しい人たちにたくさん聞いて材料をそろえてからなら出せると思います。

―他人の意見はアイデアにどう生かしていますか。
 私はすぐにアイデアを開示して他人の声を取り入れます。アイデアが行き詰まる時は自分でも気づかない枠の中だけで考えてしまっているとき。人の声を聞くと「そんな考えがあるのか」とその人の視点で改善できます。

普段の環境作りが威力を発揮する

―一般のビジネスパーソンも仕事の現場でアイデアを求められる場面があります。ビジネスパーソンがアイデアを出せるようにする上でまず何をすべきでしょうか。
 短期的にはなるべく自分の興味や経験があることと結びつけられると勝ちだと思います。釣りが好きな人の場合、釣りとの類似性を考えたり、新製品を釣り人が使うと想定して困りごとを実感として考えたりすると他の人には出せないアイデアが出せますし、その後が楽です。「ひらめいた」がすべてを解決することは本当にまれ。そこからどうするかが立ちふさがるはず。自分に材料があることから出したアイデアであれば興味深く続けられます。

(逆に)それほど興味が無いことについて、いきなりアイデアを考えても出てきません。それについて調べることは大事ですが、その日から調べていくのは昔から興味があった人に比べてスタートが遅れていますから相当損です。

―長期的に取り組むべきことはありますか。
 アイデアを出す環境を整えることが重要だと思います。会社近辺のランチマップを作るとか、仕事とは関係のないことについても同僚とアイデアを出し合う雰囲気を作っていると、いざ仕事のときに役立つと思います。普段からやっていることはとても威力がある気がします。

―アイデアを共有する方法として企画会議などがありますが、よい会議の進め方はありますか。
 企画会議で面白いアイデアが出た経験が私自身にないです。一つ思うのは会議で課題を共有してアイデアを考えるよりも、事前に共有して個々人がアイデアを持ってくる形の方がよいと思います。そこでアイデアをふくらませたり、アイデア同士を掛け合わせたりということであれば会議はあってもいい。

あとアイデアの否定はしないこと。アイデアの段階では全部乗っかっていい。うまく転がって駄目だと思っていたアイデアが新鮮なものになることがあります。もし乗っかれないなら黙っていてそのアイデアが自然に流れるようにする。

それから経験則ですが、困ったことを解決する(課題解決型の)アイデアが必要な場合は(課題に直面した後)即座に検討した方がよいと思います。現場が見えていてアイデアをすぐに試せるという環境は大きいですし、(後ほど)会議で検討となるとそれまでに失われるものがある気がします。

【略歴】1964年、広島生まれ。ゲーム作家・ライター。代表作「ぷよぷよ」「トレジャーハンターG」「はぁって言うゲーム」など。著作「仕事が100倍楽しくなるプロジェクト攻略本」「自分だけにしか思いつかないアイデアを見つける方法」「思考ツールとしてのタロット」など。元立命館大学映像学部教授。西武池袋コミュニティカレッジ「表現道場」講師、宣伝会議「編集ライター講座米光クラス」専任講師などを務める。

連載・発想のスイッチの入れ方

#01 G-SHOCK・伊部菊雄(11月18日公開)
 #02 ぷよぷよ・米光一成(11月21日公開)
 #03 ∞プチプチ・高橋晋平(11月25日公開)
 #外 博報堂のアイデア発想AI(11月28日公開)
 #04 空調服・市ヶ谷弘司(12月2日公開)
 #05 ガリガリ君・鈴木政次(12月5日公開)

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COMMENT

葭本隆太
デジタルメディア局
ニュースイッチ編集長

小学生の頃、スーパーファミコンの「すーぱーぷよぷよ」に熱中しました。とても強い親友との対戦に熱くなり、負けて悔しくて一人で連鎖の練習をしました。対戦できる落ちゲーは画期的だったように思います。インタビューでは、落ちゲーの企画を引き継いでからコンセプトのカギとなる「ソフト」にたどり着くのに3日間だったという時間軸の短さに驚きました。「これからどんなゲームを作りたいですか」という問いに対する答えも印象的でした。

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