5Gで運転席はカーゲームのようになる?助手席にはアバター!

「車内を楽しく」キラーコンテンツになるか

ヴァレオはドコモと組み自動運転車を遠隔操作するデモを披露した

自動車業界で第5世代通信(5G)は、自動運転分野での活用が注目される。自動運転システムでも対処しきれない状況下での車両の遠隔操作、車内での娯楽サービス提供といったテーマで試行が始まった。高速・大容量、低遅延という5Gの特徴を生かし、どういった新たな価値を自動車に加えられるかが問われる。

まるでゲームセンターの車ゲームのような運転席に乗り込んだドライバーが、ハンドルを切ると目の前のモニターに映る実際の自動車がスムーズにカーブを曲がっていった―。大手自動車部品メーカーの仏ヴァレオは「第46回東京モーターショー」でNTTドコモと協業し、5Gを使って自動運転車を遠隔操作するデモを世界で初めて披露した。

車両は約45キロメートル離れた神奈川県横須賀市にあるドコモ施設の駐車場につくったコースにある。障害物などで自動運転システムが対応できない状況になると、モニターに映し出された車載カメラからの現地映像を頼りにハンドルを操作する。

ドライバー役のヴァレオジャパンのナンダラジョグ・ヘマント運転支援技術研究センタープロダクトテクニカルリーダーは「半日ぐらい練習したけれど、今は会話しながらでも操作できる」と笑顔。

スムーズな操作を可能にしたのは、データ遅延の少ない5Gによるところが大きい。ドコモの阿部順一5Gイノベーション推進室5G方式研究グループ担当課長は「まだ検証が必要だが、5Gが有効に使えそうな手応えはある」と話す。

5Gを使って自動運転の実現を目指す取り組みは、SUBARU(スバル)とソフトバンクが共同研究に乗り出すなど活発化する。

仮想キャラクターと一緒にドライブしませんか―。日産自動車はドコモと共同で、5Gを使って走行中の車内で、別のところにいる人のアバター(分身)とコミュニケーションできる技術を開発した。現実空間と重ね合わせる形で3次元(3D)アバターを利用者のゴーグル型端末に映し出す。

隣にアバターとして“座った”英会話教師のレッスンを受けたり、アイドルのアバターとドライブできたりするサービスを想定し実証実験に取り組む。自動運転でドライバーが運転から開放されれば車内でできることは劇的に増える。日産の担当者は「『デジタルで車内空間を楽しくするメーカーは日産』とのイメージをつくっていきたい」と意気込む。

携帯電話がスマートフォンに取って代わり、新たなサービスが数多く生まれた。この進化は通信技術の高度化が下支えした。同様に5Gには自動車を発展させる潜在力がある。

一方、「現時点では今の4G規格で事足りることも多い」(自動運転関連の開発に携わる電機メーカー技術者)との声もあがる。自動車分野で5Gならではのキラーコンテンツを生み出していけるか−。自動車メーカーや通信、ネットサービス事業者には「ゼロから1を創る」発想力が求められる。
(取材・後藤信之)

日刊工業新聞2019年11月13日

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