乗船場と直結する“水郷の駅"、掘割が賑わいの結び目に
西鉄柳川駅の大きなポテンシャル
福岡県南部の水郷・柳川。城下町に張り巡らされた掘割をどんこ舟でのんびり下れる風光明媚(めいび)な観光地だ。玄関口となる西日本鉄道の西鉄柳川駅は2015年に駅舎と周辺が生まれ変わった。地域と協働で改修し、駅の利便性と存在感を高めた。現在、象徴である掘割を駅前に引き込んで鉄路と水路を結ぶプロジェクトが進み、さらなるにぎわい創出に向かう。
同駅は生活路線の西日本鉄道・天神大牟田線にあって、太宰府駅(福岡県太宰府市)と並ぶ観光利用の多い駅。乗降客の内訳は生活と観光で半々。周辺の人口が減少する中、観光客の入り込みなど「同線で数少ないポテンシャルのある駅」と、西鉄まちづくり推進部の吉中美保子課長は期待する。
駅を中心にした取り組みは09年に始まった。産学官と地域が一つになり、ワークショップを通じて住民・観光客双方に使いやすい駅のあり方を協議した。
これを踏まえ15年に新駅舎が完成。駅東西を貫く自由通路やイベントスペースも整備。シンプルな造りで動線が悪かった旧駅から、住民も「柳川らしさをあらためて感じられる駅」(吉中課長)に変わった。
19年度には行政と連携した、さらなる周辺整備に着手。24年度完了に向けて、最寄りの川から約100メートル掘削して掘割を引き込む。掘割は福岡県、広場や道路は柳川市、西鉄は交流施設を整備する。
駅を出て目前にある掘割で水郷を強く印象付けるほか、駅前に乗船場を設けて水陸の結節点の役割を持たせる。交流施設の詳細は今後詰めるが、飲食・物販や観光案内所を核にする。「住民も観光客も使える」(同)ことで両者の結びつきを強め、交通路としての掘割活用に向けても可能性を広げる。
【駅の概要】 乗降数は1日平均1万1438人(18年度)。駅舎には水や舟のモチーフをちりばめたほか、滞在型の機能が評価され、15年「グッドデザイン賞」を受賞した。
日刊工業新聞2019年11月7日