待合室にはスタバ、ホームにはベンチも自販機もない日本最古の駅舎
門司港駅、令和の時代に復元。「今昔」が旅情を誘う
本州と九州を結ぶ関門橋を眼前に望む門司港駅(北九州市門司区)がこの春、創建当時の姿に復元された。現存する駅舎としては日本で最も古い1914年(大3)に建築され、また駅舎として初めて国の重要文化財にも指定された同駅だが、過去に何度も改修工事が施され開業時の姿が薄れていた。老朽化が進んだのを機に、2012年から保存修理工事を開始。総事業費22億円、約6年をかけて復元を果たした。
現役の駅舎が重要文化財に指定されているのは、門司港駅と東京駅しかない。東京駅よりも開業が10カ月早い門司港駅は、文字通り日本最古の駅として地域の主要観光施設の役割を担っている。
北九州市はかつて九州最大の都市として隆盛を誇ったが、石炭や鉄鋼産業の衰退で往時の勢いを失った。県都・福岡市への一極集中が進み、近隣都市と比べて観光施設も少ないことから、国内外の観光客を呼び込むランドマーク育成が課題だった。同市は課題克服のため産業・夜景観光や、小倉城周辺整備などさまざまな取り組みを進めた。その切り札が門司港駅改修だった。
周辺エリアは「門司港レトロ」と称して、観光客誘致に力を入れてきた。もともと国内向けだったが、大正時代を再現したレトロな街並みや駅舎が「インスタ映え」すると外国人観光客に人気となり、大型連休期間中は1日当たり2万人近い乗降客数を記録するなど、早くも復元効果が表れ始めている。
松尾宜彦61代目駅長は「タイムスリップできる空間が人気。今後も観光資産として貢献していきたい」と話す。大正から昭和、平成を経て令和元年に復元を果たした新生門司港駅。ベンチも自動販売機もない、電球に照らされた美しいホームは今も昔も旅情を誘う。
【概要】
JR九州鹿児島本線の起点駅。ネオ・ルネサンス様式の建築様式が大正時代の優美さを今に伝える。旧三等待合室には、当時の意匠を随所に施したスターバックスコーヒーが入居する。
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日刊工業新聞2019年5月30日