富士フイルムのゼロックス買収、「日本は完全子会社で米国は断念」の損得
富士フイルムホールディングス(HD)は5日、富士ゼロックスを11月上旬に完全子会社化すると発表した。米ゼロックスが持つ富士ゼロックス株式25%と米国関連会社に関わる持ち分を取得し、米ゼロックスに計23億ドル(約2530億円)を支払う。富士ゼロックスとのシナジー創出と欧米市場を含めた全世界でOEM(相手先ブランド)供給できる体制を整え、ドキュメント事業で2024年度に18年度比1・3倍の1兆3000億円の売り上げを目指す。
富士フイルムHDは米ゼロックス買収をめぐり18年に米ゼロックスと合意したが、その後米ゼロックス経営陣が契約を破棄するなど、膠着(こうちゃく)状態だった。だが米ゼロックスと新たな契約を結び、「今後の経営統合については考えない」(古森重隆富士フイルムHD会長)としている。
また富士フイルムHDが米ゼロックスに提起していた損害賠償請求は、富士ゼロックスの完全子会社化後に取り下げる。このほか、「重要な事業パートナー」(助野健児富士フイルムHD社長)として、米ゼロックスへのドキュメント製品供給は継続。21年3月を終了とする米ゼロックスとの提携契約は、従来通り有効とする。
富士フイルムHDは富士ゼロックス子会社化で、24年度に営業利益500億円以上の押し上げ効果を見込む。富士ゼロックスの合弁状態を解消することで、機動的な投資判断につなげるほか、富士フイルムの画像処理技術と、富士ゼロックスの言語処理技術を応用した製品展開を加速する。助野社長は「最良な選択」と強調した。
富士ゼロックスはアジア・パシフィック地域、米ゼロックスはそれ以外の地域を販売圏にしていた。米ゼロックスが経営不振に陥ったのを機に、富士フイルムHDは18年に米ゼロックスの株式を取得し、米ゼロックスと富士ゼロックスの経営統合を目指すと発表。
ただ米ゼロックス買収に反対する株主が買収差し止めを求めて提訴。米裁判所が買収一時差し止めの判決を下し、株主総会で新たに選任された米ゼロックス経営陣が買収契約破棄を表明した。米ゼロックスの契約破棄に伴い、富士フイルムHDは損害賠償請求を提起していたが、今回米ゼロックスの買収を断念した形となる。