「私は経営者として幸せ。本業を失うという機会に巡り合えた」
富士フイルムHD・古森CEOが語るリーダー論
「打ちたい手がまだ三つ、四つある」―。富士フイルムホールディングス(HD)は写真フィルム市場の消失という危機を乗り越え、高機能材料や医薬・医療機器など複数領域で存在感を放つまでに成長した。会長兼最高経営責任者(CEO)の古森重隆氏は、それでも変革に挑む姿勢を崩さない。最近は医薬・医療機器から再生医療まで含めたヘルスケア分野のM&A(合併・買収)で注目される。同分野で掲げる目標は2018年度に売上高1兆円(15年度比2・3倍)。「企業は満足したら駄目。常に技術を磨き、社会に貢献し続ける」という古森スピリットが強く息付く。
―攻めの経営を貫いてきました。20年後、30年後の姿をどう描いていますか。
「写真フィルム事業を失った当時に比べれば立て直したが、新たに仕込んだ領域やまだ成果を出せていない分野が多くある。例えば材料技術を生かせる高機能材料やヘルスケア事業は、もっと花開くはずだ。人工知能(AI)やIoT(モノのインターネット)への対応も進める。すべて整えば、5年後に売上高で3兆円以上、営業利益率10%という次の段階も視野に入る」
―写真フィルム技術の本質を深耕し、事業を広げてきました。
「この先も確かな可能性を持っている。潜在的、または蓄積した技術力だけでなく、新たなことに挑戦し続けてきた企業文化も強みだ。深掘りした技術力で、他には作れないモノを仕上げる姿勢が根付いている。あとはいつ、どう展開するか。M&A(合併・買収)など投資を含め、どの技術を切り口として蓄えるべきかを決めるのが経営の役割だ」
―リーダーに必要な資質は何でしょうか。
「まず社会や会社に対する使命感。全体のためにやる気持ちがないとダメだ。事業環境がめまぐるしく変わる今は、情報への感度も大切。その中で現状を捉え、針路を決める判断力も欠かせない。もしリスクを伴うなら、決断に耐えうる胆力も必要だろう。社内に方向性を示す能力や実行力、全体を引っ張っていく腕力もいる」
―判断を誤る恐れもありますね。
「常にあるが、リーダーが負けたら会社は終わり。だから、業態転換に取り組んだ社長時代は絶対に間違えない、負けないと必死だった。神様のように正しい判断ができたらどんなに良いかとすら思ったよ。ただ思い返せば、私は経営者としてはとても幸せだ。本業を失うという機会に巡り合える経営者は、そうはいないから」
―後継者育成の手応えは。
「役員から管理職まで成長している。6月に社長兼最高執行責任者(COO)に就いた助野君も、社長として確実に力を付けつつある。いずれは最高経営責任者(CEO)としても育つだろう。企業として満足できるゴールはないが、後を託そうと考えている時機はある。でも今は、やるべきことがたくさんある。もっと良い会社にしたいし、もっと良いモノを送り出したい」
―攻めの経営を貫いてきました。20年後、30年後の姿をどう描いていますか。
「写真フィルム事業を失った当時に比べれば立て直したが、新たに仕込んだ領域やまだ成果を出せていない分野が多くある。例えば材料技術を生かせる高機能材料やヘルスケア事業は、もっと花開くはずだ。人工知能(AI)やIoT(モノのインターネット)への対応も進める。すべて整えば、5年後に売上高で3兆円以上、営業利益率10%という次の段階も視野に入る」
―写真フィルム技術の本質を深耕し、事業を広げてきました。
「この先も確かな可能性を持っている。潜在的、または蓄積した技術力だけでなく、新たなことに挑戦し続けてきた企業文化も強みだ。深掘りした技術力で、他には作れないモノを仕上げる姿勢が根付いている。あとはいつ、どう展開するか。M&A(合併・買収)など投資を含め、どの技術を切り口として蓄えるべきかを決めるのが経営の役割だ」
―リーダーに必要な資質は何でしょうか。
「まず社会や会社に対する使命感。全体のためにやる気持ちがないとダメだ。事業環境がめまぐるしく変わる今は、情報への感度も大切。その中で現状を捉え、針路を決める判断力も欠かせない。もしリスクを伴うなら、決断に耐えうる胆力も必要だろう。社内に方向性を示す能力や実行力、全体を引っ張っていく腕力もいる」
―判断を誤る恐れもありますね。
「常にあるが、リーダーが負けたら会社は終わり。だから、業態転換に取り組んだ社長時代は絶対に間違えない、負けないと必死だった。神様のように正しい判断ができたらどんなに良いかとすら思ったよ。ただ思い返せば、私は経営者としてはとても幸せだ。本業を失うという機会に巡り合える経営者は、そうはいないから」
―後継者育成の手応えは。
「役員から管理職まで成長している。6月に社長兼最高執行責任者(COO)に就いた助野君も、社長として確実に力を付けつつある。いずれは最高経営責任者(CEO)としても育つだろう。企業として満足できるゴールはないが、後を託そうと考えている時機はある。でも今は、やるべきことがたくさんある。もっと良い会社にしたいし、もっと良いモノを送り出したい」
日刊工業新聞2016年11月29日