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リコーと富士ゼロックス、幹部が語った構造改革成果と次の一手

名門復活なるか
 事務機器の構造不況が続く中、リコーと富士ゼロックスは構造改革を進めている。両社幹部が改革の進捗と成果を語った。

富士ゼロックス、営業利益率10%にかなり近づく


 富士ゼロックスの玉井光一社長(写真)は、2020年3月期に達成を目指す営業利益率10%台について「リアリティーのある目標だ」と述べ、生産体制の再編も含めて構造改革を完遂する考えを示した。18年3月期の営業利益率は8%台だが、19年3月期見通しについて玉井社長は「10%にかなり近づくだろう」と強調した。

 これまで同社は事務機器事業で低採算の製品から撤退し、利益率の改善に取り組んできた。今後は11月に投入したセキュリティー機能を高めた新型複合機の拡販のほか、国内外で約1万人の人員削減を柱とする構造改革などが寄与する。構造改革では国内外10工場の内、既に新潟事業所(新潟県柏崎市)の閉鎖を決めるなど「国内はほぼめどが付き、残るは海外」(玉井社長)としている。海外では韓国・仁川の工場閉鎖を決定している。

 一方、富士フイルムホールディングス(HD)が検討する米ゼロックスの買収について、11月に富士フイルムHDの古森重隆会長と玉井社長が、来日したゼロックスのジョン・ビセンティン最高経営責任者(CEO)と会談。玉井社長は「ゼロックス、富士ゼロックスの現在の協力関係を継続することが、合理的だという印象を持ってくれたと思う」との見解を示した。

富士ゼロックス・玉井光一社長

(日刊工業新聞2018年12月24日掲載)

リコー、不振脱却から“攻め”へ


 業績不振からの脱却を目指し、構造改革を段階的に進めてきたリコー。2018年度はその成果もあり当期黒字転換を見込み、攻めのステージへ足固めに入る。最高財務責任者(CFO)ながら、経営企画本部本部長として経営の参謀役も担う松石秀隆取締役専務執行役員に戦略を聞いた。

 ―構造改革の現在までの手応えは。
 「トップダウンで聖域に手を付け、短期間でやりきれたと思う。人員最適化や資産売却は峠は越え、業績面でも効果が出てきた。最後の懸念が米国だったが、7―9月期から底を打ってきた。最適化した状態を基盤に、拡大へ向けてかじを切っていきたい」

 ―22年度までに売上原価率55%の目標を掲げています。
 「専門の委員会も立ち上げ、各種施策を打ち始めた。大きな目玉は二つ。まずは複合機の保守に伴うコストの削減だ。新製品への入れ替えを段階的に進め、既に保守のコール回数は2―3割減っている。今後出す新製品はこの傾向をさらに推し進めていく」

 「もう一つは、来年に立ち上がる中国華南の新工場だ。最新のデジタル技術やロボットを活用し、自動化・生産性の改革を進める。これが製品品質を高め、さらには保守に関連するサービスコスト低減にもつながる。新製品への入れ替えと、新工場の稼働とともに、徐々に原価低減の効果が効いてくる」

 ―デジタルカメラ事業はどのような役割を担いますか。
 「デジカメは総花的ではなく、特徴ある製品に絞って展開している。この結果、増益となり、赤字幅は縮小した。カメラの画像認識技術は今後のIoT(モノのインターネット)時代に不可欠な技術。事業として継続することで、技術を育てていく必要があると考えている」

 ―リコーリースの位置付けは。
 「最も重要な会社との認識を持っている。まず販売を担うリコージャパンの与信や回収といった基幹業務を担っており、必要不可欠だ。またリコーリースの顧客は4分の3がリコー以外を占める。リコーが新規事業をする上ではリコーリースのネットワークが大きく寄与している。さらにモノからコトへサービス化が進む中でリコーリースのファイナンス機能の役割は大きい。リコーリースの売却は検討していない」

【記者の目/現場・経営側の隔たり防ぐ】
 4月から松石専務は人事本部長と二人三脚で全国を行脚し、若手従業員との対話を重ねている。現場の意見に耳を傾け、経営側との感覚の隔たりを防ぐ狙いがある。19年に導入を目指す社内ベンチャー制度もこの活動がきっかけだ。今はまだ小さな変化かもしれないが、継続すれば大きな成果になる。名門リコーがどのような変貌を遂げるのか期待したい。(杉浦武士)

松石秀隆取締役専務執行役員

(日刊工業新聞2018年12月19日掲載)
梶原洵子
梶原洵子 Kajiwara Junko 編集局第二産業部 記者
両社とも、人員削減や工場閉鎖など大ナタを振るいました。これまでの収益性から、原価低減や生産効率化は最大手のキヤノンが一歩抜きに出ている印象があります。今年度、来年度と、両社とキヤノンとの差は縮んでくるのでしょうか?

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