「商品企画支援企業」が考えるヒット商品の条件

アイ・キューブ、消費者視点を見える化

 企業の依頼で市場を調査し、商品化提案を行うアイ・キューブ(兵庫県芦屋市、広野郁子社長、0797・23・5761)。マーケティングリサーチが事業の中心だったが、2018年に企業と消費者モニターの対話型マーケティングプログラム「UOVO(ウオヴォ、イタリア語で“卵”の意)」をはじめ、消費者共創型の企画提案に力を入れ始めた。数年前に1割程度だった企画提案事業の件数は現在6割にまで伸び、調査会社から「商品企画支援企業」へと変貌を遂げつつある。

同じ目線で議論


 これまでマーケティングリサーチといえば、調査会社が中心になってモニターへのヒアリングを行い、結果を書面などで企業に報告する形態が多かった。

 一方「UOVO」は企業が主体となって調査に参加し、アイ・キューブの登録モニターと自由に意見交換する。「お客さま目線のモノづくりを実現するため」(広野社長)、依頼元の企業担当者や技術者を巻き込んで消費者と同じ目線で議論するのが目的だ。壁一面のホワイトボードを使用して消費者とともに生活の課題を掘り下げ、企画提案まで一気通貫で提供する。

 ビッグデータの活用により、消費者行動はより細微に捉えられる時代になったが、「作っている本人が熱く語れなければヒットは生まれない」(同)。企業が消費者から直に話を聞くことで生活がイメージしやすくなり、商品開発にユーザーの意見をより反映できるという。

 こうした手法を活用し、大手食品メーカーのロングセラー商品を手軽に使えるよう改良し商品化したところ、共働きの主婦などの間で話題になり、爆発的にヒットした。元になったのは生活者である主婦モニターの意見だ。利用シーンがイメージできるイラスト入りのパンフレットを製作し、小売店に販売手法を詳しく解説したことも追い風になった。

 「“あのお母さんを幸せにしたい”という明確なイメージを持ち、社内で(企画担当者や技術担当者の)ベクトルがそろうことがヒットの条件」と広野社長は語る。紙面アンケートだけでは見落としがちな“リアルな声”を、企業担当者が真剣味を持って聞くことで「消費者と企業の共創」(同)が実現し、世の中のニーズに合致する商品を生み出せるという。

購買理由深掘り


 広野社長自身は三菱電機で温度帯の高い冷凍室「サクッと切れちゃう冷凍」の開発に携わった経験を持つ。「通常、技術者はスペックの向上を追求するが、消費者の視点とはずれていることが往々にしてある」(同)という。当時の経験を生かし、技術向上だけでなく生活者の購買理由を深掘りすることで「本当に必要とされている商品」(同)を探り当てる。

 「UOVO」の他にも、企業向けに企画担当者の育成事業「キカク脳」の提供も始めた。大企業のみならず、「自社ブランドで商品を作りたい」と希望する中小企業からの引き合いが増えているという。

 「“量より質”を追求し、企業に寄り添う形で企画提案の幅を広げたい」と広野社長。今後は企画提案の割合を事業の9割近くまで増やす方針だ。(取材=大阪・大川藍)

企業担当者と消費者モニターは「UOVO」専用スペースで議論する

日刊工業新聞2019年11月1日

  

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