町工場を体験「オープンファクトリー」、各地で開催が増える理由

 人手不足や住工混在など、さまざまな課題を抱える町工場。そんな課題の解決策として「オープンファクトリー」の活用が広がっている。工場の開放を通じて、人を呼び込み、モノづくりの魅力を体感してもらうのが狙いだ。山積する課題に負けまいと、初開催にこぎ着けた東京都葛飾区、さいたま市岩槻区の取り組みを追った。(大串菜月、さいたま・石井栞)

 東京都葛飾区では10月26日、有志で集まった企業9社が「かつしかライブファクトリー」を開いた。同区は製造業者数がピーク時に比べ約4分の1に減少。区内工場の大半は住工一体地域にあり、近隣住民との関係性は事業継続の上で大きな課題となる。内容はワークショップや工場見学など、各企業が自由に考えた。

 山崎精工(東京都葛飾区)は真ちゅうコマづくり体験を実施。参加者は旋盤を操作し、コマやお香立てを作った。山崎勇人社長は「自社の機械でこんなにいろいろなことができるのかと、逆に第三者から事業の可能性を教えてもらった」と感想を述べる。

予想以上の成果


 ミヨシ(同)は、生分解性プラスチックカップ作りを行った。放電加工や磨きなど金型作りから成形まで体験でき、当日は工場見学者など約40人が工場を訪れた。イベントの発案者である杉山耕治社長は、東京都墨田区のオープンファクトリー「スミファ」に参加しており、これまでのノウハウを今回のイベントや自社内の計画に生かした。杉山社長は「参加者全員に満足したと言ってもらえた」と喜びをあらわにした。

 参加人数は133人と目標の100人を突破。参加企業は就職希望者が出たり、近所の人が見学に来るなど、予想以上の成果があったという。来年はブラッシュアップを加え、評判が良かった2社以上を回ってモノをつくるコラボレーション企画の拡大なども検討。参加者の満足度向上や地域の発展を目指す。

彩の国オープンファクトリーin岩槻で公開する工場内(ニイガタ精密)

新たな交流期待


 岩槻工業団地事業協同組合(さいたま市岩槻区、小沢日出行理事長)は8日、「彩の国オープンファクトリーin岩槻」を初めて開催する。さいたま市内では初となる。企業数が約120社と全国3番目の規模の岩槻工業団地。工業団地内の交流を深めBツーB(企業間)を強化するとともに、周辺の理工系大学や工業高校の知名度を高めて人材採用にもつなげる。

 金属加工のほか、伝統産業や食品加工、自動車リサイクルなど多種多様な企業14社をバスツアーで見学できるほか、イシクラ(岩槻区)ではノートの制作、プラナエンジニアリング(同)で電線への端子圧着を体験できる。

 「同じ工業団地でも知らない会社は多い」と、新たな交流に期待するのは今回のオープンファクトリー実行委員長を務めるワイヱス工業所(同)の渋谷敬一社長。埼玉県内でオープンファクトリーが開催されたことをきっかけに企画し、同団地青年部の渋谷社長ら4人が実行委員長となり準備を進めた。

 卒業アルバム制作などを手がけるイシクラはポスターやチラシの制作、貸し切りバス業の三倭観光(同)はバスの運行と、得意分野を生かし役割分担した。ニイガタ精密(同)の本田敦弘社長は「多業種の集まる岩槻工業団地を知ってもらいたい」と意気込む。

 新潟県燕三条地域で開催する「工場の祭典」の参加企業は100社以上で、行政の支援もあり大きな盛り上がりをみせている。町工場だけでなく地域一丸となってオープンファクトリーを実施することで、地域を巻き込んだ相乗効果が期待される。

日刊工業新聞2019年11月1日

  

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