格安スマホと二刀流の「楽天モバイル」、ドコモが批判する理由

5G情報筒抜けの恐れ

 携帯電話回線を借りて格安スマートフォン事業を展開する仮想移動体通信事業者(MVNO)と、自社回線を持つ移動体通信事業者(MNO)を両立する形となった楽天モバイルに対し、NTTドコモや有識者から批判が出ている。ドコモは、2020年春の第5世代通信(5G)商用化と同時期にMVNOへも5Gを提供する。5G情報も事前提供するが、ドコモ回線でMVNOを展開する楽天モバイルのMNOに、ドコモの5G情報が筒抜けになる恐れがあるためだ。(文=編集委員・水嶋真人)

 総務省で先月開かれた「モバイル市場の競争環境に関する研究会」。携帯端末のSIMロック100日ルール改正に向けた議論に注目が集まったが、本来の議題は5Gネットワーク提供に関する課題の検討だった。

問題が顕在化


 その席上、ドコモ企画調整室の榊原啓治室長は「MNOが自社グループ内のMVNOを利用して競合他社のMNO網を利用する形態は認められるべきではない」と問題提起した。MNOとMVNOが一体化している楽天モバイルが対象だ。

 要因は「5Gが商用化すれば、この問題がより顕在化して大きなリスクになる」(榊原室長)からだ。ドコモなどMNO3社は5Gを提供するMVNOに対し、5G提供時期やエリア、通信速度など公表していない情報も事前に提供しなければならない。

実証難しく


 このため、楽天モバイルがドコモ回線を使うMVNOとして入手した5G情報を、自社MNOの5G部門に横流しする恐れが出てきた。ただ、会合では同研究会の座長を務める新美育文弁護士が「秘密漏えいの実証は難しい。大きな宿題だ」と述べるにとどめた。

 5G情報漏えい以外にも、例えば楽天モバイルが人口の多い都市部のみMNOとして自社回線を提供し、地方はMVNOとしてドコモ回線を使った場合、MNOでありながら設備投資リスクを負わずに事業展開ができる。MNOとして自社で5G技術を開発しなければならない一方、ドコモが開発した5G技術をMVNOとして利用することも可能になる。

 楽天モバイルだけでなく、KDDI傘下のBIGLOBEモバイル、ソフトバンク傘下のLINEモバイルもドコモ回線を借りてMVNOを展開している。BIGLOBEモバイル経由でKDDIへ、LINEモバイル経由でソフトバンクへドコモの5G情報が伝わる恐れも否定できない。5G時代を前に、MVNOを傘下に持つMNOへの早急な制度整備が必要となる。

                  

日刊工業新聞2019年10月11日

  

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