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“還暦ドライバーのクルマ”、新型「カローラ」開発者の本音が聞きたい!

大衆車のコンセプトは不変、今回は30代や40代もターゲット
【ミッドサイズビークルカンパニー MS製品企画ZEチーフエンジニア 上田泰史氏】

 日本の“大衆車”というイメージが定着しているカローラも12代目となった。大衆車という言葉は非常に重い意味を持ち、数多くのお客さまに愛されるクルマだととらえている。カローラの歴史を振り返ると「常にお客さまの期待を超える」ことを大切にしてきた。今回もこのコンセプトは不変で、プラスアルファの価値を随所にちりばめた。

 新型はセダン「カローラ」とワゴン「カローラツーリング」の2車種を用意した。プラットフォーム(車台)は新たな設計思想「トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー(TNGA)」で開発した海外モデルと共通化し、開発・設計コストを抑えた。このため、全長や全幅が大きくなり、国内規格は従来の「5ナンバー」から「3ナンバー」に大型化した。

 ただし、海外モデルの車格をそのまま持ってくるのではなく、日本の道路事情に合わせてコンパクトにした。デザインや走りの追求と取り回しの良さを両立するため、プラットフォームは共通化しつつ日本専用のボディー設計を採用した。

 デザインは「直感的にかっこいい」と思ってもらえるように仕上げた。前照灯やフロントをスポーティーにするなど、外観の印象を一新した。カローラの顧客層は60歳以上がメーンだったが、今回は30代や40代もターゲットとした。顧客層を広げることで、カローラというクルマをこれからも長くお客さまの期待を超えられる存在にする―。そんな思いで開発に臨んだ。

 顧客層の若返りに向けて、スマートフォンとの連携を大きく意識した。新型車ではスマホと連携した音声操作ができるコネクテッド機能などを搭載。クルマに乗り込んでもスマホで聴いていた音楽が楽しめたり、見慣れたスマホの地図アプリを車載ディスプレーで見られたりするなど、スマホとクルマのシームレス(継ぎ目なし)化にこだわった。

 オーディオディスプレーの搭載や先進安全装備の標準化など、機能を大幅に刷新した上で、価格は200万円以下とすることを最重要課題とした。TNGAの導入や仕入れ先と一緒になった原価低減をしっかりと進められたことが、目標価格の達成にも奏功した。

【記者の目】
 カローラは1966年のデビュー以来、世界150以上の国・地域で累計4750万台越を販売したトヨタ自動車の看板車種の一つ。7年ぶりとなるフルモデルチェンジが、顧客層のすそ野を広げられるかに注目したい。TNGAでプラットフォームを共通化しつつ、販売する国・地域ごとにうまく味付けをする。カローラはトヨタが進める新たな設計思想の今後を占う試金石となりそうだ。
(名古屋支社・長塚崇寛)
日刊工業新聞2019年9月27日

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