「差別化された価値を持つ製品と生産システムを有する企業こそが最強」
日本の産業競争力強化には何が必要?
**日本の製造業を強くするために
―この本で強調したいことは。
「日本の製造業を強くする一つの考え方を示した。私の結論は、差別化された価値を持った製品と、その製品を生産するための差別化された生産システムを有する企業こそが最強の製造業であるというものだ。プロセス技術者や設備設計者だけでなく、これらの技術者を教育する立場の責任者や生産設備に投資しようとしている経営者を読者に想定した。どのように生産プロセスや生産設備を設計すれば良いか具体例を織り交ぜて記述している」
―AGCの経験値をぎりぎりまでリアルに公開しています。
「東京大学工学部の畑村洋太郎先生の研究室の卒業生で『実際の設計研究会』会員である私が編著者となり、生産技術を担当しているAGCの技術系社員とともにまとめた。AGCの中にチームを構成し、生産システムについてメンバーと議論を繰り返しながら執筆した」
―強い製造業には、六つの成功パターンがあると説いています。
「1番目は、非常に強い製品を持っていること。差別化された商品を世界に先駆けて開発し、その製品を特許などで権利化することに成功した企業だ。しかし、最近は製品が世の中に出回れば、すぐ似たような製品を競合他社が発売するようになってきた。製品のみで差別化して長期に強いビジネスを続けるのは難しくなっている。
2番目は、競合より早く顧客が求める製品を開発して発売すること。常に一歩先を行っていれば、ある程度高い利益率を確保できる。これには、スピードを持って開発を行う企業文化が必要だ。
3番目は、他社を圧倒する強い設備投資を行うこと。他社に先駆けて大型投資を行い、大量の生産能力を確保して市場を独占してしまうという考え方だ。一方、失敗した時の大きなリスクも伴う。
4番目は、ニッチな領域で勝負すること。なかなか競争相手が出てこない場合が多く、強いビジネスを継続できる可能性がある。
5番目は、製品だけでなくサービスも販売すること。生産された製品に販売やアフターサービスも含めて差別化してビジネスを強くしようという考え方。
そして、本書で中心に述べたのは、6番目の差別化された生産システムを持っていること。他社が追随できないような強い製品や品質、価格や納期などで他社と差別化することができれば、強いビジネスを長く展開できる。強い製造業を目指すには、生産プロセスと生産設備が一体となった生産システムで差別化することが重要だ」
―人工知能(AI)やIoT(モノのインターネット)といった先端技術をテコに、日本の産業競争力は向上しますか。
「もちろん、これらの技術を徹底的に利用することは非常に重要だ。しかし、日本の産業競争力を強化するためには、これらを強化するよりも、日本の製造業で強い技術や分野を強化することの方が重要だと考えている。変化の方向だけを一斉に追いかけるのではなく、差別化しなければビジネスは強くならない」(山下絵梨)
◇石村和彦(いしむら・かずひこ)氏 AGC会長
79年(昭54)東京大学大学院修了、旭硝子(現AGC)入社。エンジニアリング部でガラス生産設備の設計・開発・保全業務に従事。2000年液晶用ガラス生産子会社である旭硝子ファインテクノ社長、06年旭硝子(現AGC)執行役員関西工場長、08年同社社長執行役員を経て、15年より会長。18年より経済同友会副代表幹事を務める。兵庫県出身、64歳。
『差別化戦略のための生産システム プロセス技術と設備技術の融合(実際の設計選書)』
本書では、生産設備の設計に際して、どのような考え方で生産プロセスを設計し、どのように生産設備を設計すれば、差別化戦略に沿った生産システムが実現するのかを解説する。学術的な詳細の話は避け、実際の生産設備設計ができる具体的な方法を実例とともに記述。
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―この本で強調したいことは。
「日本の製造業を強くする一つの考え方を示した。私の結論は、差別化された価値を持った製品と、その製品を生産するための差別化された生産システムを有する企業こそが最強の製造業であるというものだ。プロセス技術者や設備設計者だけでなく、これらの技術者を教育する立場の責任者や生産設備に投資しようとしている経営者を読者に想定した。どのように生産プロセスや生産設備を設計すれば良いか具体例を織り交ぜて記述している」
―AGCの経験値をぎりぎりまでリアルに公開しています。
「東京大学工学部の畑村洋太郎先生の研究室の卒業生で『実際の設計研究会』会員である私が編著者となり、生産技術を担当しているAGCの技術系社員とともにまとめた。AGCの中にチームを構成し、生産システムについてメンバーと議論を繰り返しながら執筆した」
―強い製造業には、六つの成功パターンがあると説いています。
「1番目は、非常に強い製品を持っていること。差別化された商品を世界に先駆けて開発し、その製品を特許などで権利化することに成功した企業だ。しかし、最近は製品が世の中に出回れば、すぐ似たような製品を競合他社が発売するようになってきた。製品のみで差別化して長期に強いビジネスを続けるのは難しくなっている。
2番目は、競合より早く顧客が求める製品を開発して発売すること。常に一歩先を行っていれば、ある程度高い利益率を確保できる。これには、スピードを持って開発を行う企業文化が必要だ。
3番目は、他社を圧倒する強い設備投資を行うこと。他社に先駆けて大型投資を行い、大量の生産能力を確保して市場を独占してしまうという考え方だ。一方、失敗した時の大きなリスクも伴う。
4番目は、ニッチな領域で勝負すること。なかなか競争相手が出てこない場合が多く、強いビジネスを継続できる可能性がある。
5番目は、製品だけでなくサービスも販売すること。生産された製品に販売やアフターサービスも含めて差別化してビジネスを強くしようという考え方。
そして、本書で中心に述べたのは、6番目の差別化された生産システムを持っていること。他社が追随できないような強い製品や品質、価格や納期などで他社と差別化することができれば、強いビジネスを長く展開できる。強い製造業を目指すには、生産プロセスと生産設備が一体となった生産システムで差別化することが重要だ」
―人工知能(AI)やIoT(モノのインターネット)といった先端技術をテコに、日本の産業競争力は向上しますか。
「もちろん、これらの技術を徹底的に利用することは非常に重要だ。しかし、日本の産業競争力を強化するためには、これらを強化するよりも、日本の製造業で強い技術や分野を強化することの方が重要だと考えている。変化の方向だけを一斉に追いかけるのではなく、差別化しなければビジネスは強くならない」(山下絵梨)
◇石村和彦(いしむら・かずひこ)氏 AGC会長
79年(昭54)東京大学大学院修了、旭硝子(現AGC)入社。エンジニアリング部でガラス生産設備の設計・開発・保全業務に従事。2000年液晶用ガラス生産子会社である旭硝子ファインテクノ社長、06年旭硝子(現AGC)執行役員関西工場長、08年同社社長執行役員を経て、15年より会長。18年より経済同友会副代表幹事を務める。兵庫県出身、64歳。
石村和彦氏の著書
『差別化戦略のための生産システム プロセス技術と設備技術の融合(実際の設計選書)』
本書では、生産設備の設計に際して、どのような考え方で生産プロセスを設計し、どのように生産設備を設計すれば、差別化戦略に沿った生産システムが実現するのかを解説する。学術的な詳細の話は避け、実際の生産設備設計ができる具体的な方法を実例とともに記述。
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