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「和食」売り込む有望市場は東南アジアより米国だ

海外PR戦略研究所代表・松島みか氏インタビュー
 「和食」が2013年にユネスコ無形文化遺産に登録されたこともあって、近年、日本食品の海外販売熱が高まっている。中小企業の食品の輸出先として、東南アジアが注目されがちだが、中小企業の海外展開を支援する海外PR戦略研究所(東京都中央区)の松島みか代表は「最も重要で有望な市場は米国だ」と力を込める。理由について聞いた。(聞き手=石掛善久)

 ―なぜ、米国市場をターゲットにすべきなのでしょうか。
 「貿易統計によると、日本の農産物輸出国・地域のトップは1995年から13年間、米国だった。その後、中国に抜かれたが13年から再び5年間、米国がトップ。近年、東南アジアが輸出先として注目されがちだが、米国市場は安定して大きい重要市場だ」

 ―しかし、距離的・人的な近さや資金の関係などから近隣諸国が有利になりませんか。
 「日本の食品輸出先で見ると、18年で米国は香港、中国に次いで3位。だが、米国の食品別輸入総額の国別割合で見ると日本のシェアは37位と低い。例えばコメ。輸入額で見るとタイが59%、インドが23%、パキスタンが4・7%。これに対し日本は0・05%だ。世界有数の高品質を誇る日本米は売り方次第でもっと売れる。日本食品はここ5年間で62%伸びている。もっと伸びるはずだ」

 ―なぜ、そう思いますか。
 「米国は民間最終消費支出で世界1位。購買力が大きく、先進国では数少ない人口増加国だ。全成人人口の肥満割合は38・2%でOECD肥満ランキング1位。日本の肥満割合は10分の1以下。日本食は大きな問題となっている米国人のメタボリック症候群対策にも寄与できる」

 ―日本食品のシェアが低い原因は。
 「全米市場から見ると日系市場は外食で3%、小売りで0・5%。非日系市場を開拓する必要があるが、多くの食品メーカーが流通の壁に直面している。米国の場合はディストリビューター(卸売業者)に卸していても自分たちでエンドユーザー(最終消費者)にしっかり提案していかないと売り上げ基盤を作るのは難しい」

 「それとスタートアップ段階の商品でも真剣に売ってくれる中堅ディストリビューターの発掘が不可欠だ。近いうちに、当研究所で中小企業の皆さまのお手伝いができる組織を立ち上げたいと考えている」
海外PR戦略研究所代表・松島みか氏
日刊工業新聞2019年8月22日

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