日本の「食」輸出好調、昨年初の8000億円台。伸びてる商品は?

イチゴに和牛、緑茶も。国別での販売戦略重要に

 日本の農林水産物・食品の輸出が拡大している。農林水産省によると2017年の輸出額は前年比7・6%増の8073億円と5年連続で過去最高を更新し、初めて8000億円台に乗せた。ただ、政府が掲げる“19年に輸出額1兆円”という目標とは、大きな開きがある。健康志向を背景にした世界的な和食ブーム、20年の東京五輪・パラリンピック開催などの追い風があるとはいえ、目標達成には農業者らの一層の輸出努力と輸出相手国でのマーケティング強化が欠かせない。

ロンドンで抹茶バーを自力で開設


 「これまで輸出拡大のため、取り組んできた成果が、ようやく現れてきている感じ」。過去最高となった輸出額を発表した会見で、斎藤健農水相は感想を述べた。17年はイチゴや牛肉、緑茶、コメなど、一般消費者から見て「日本らしい」と思う農産物の輸出額が拡大。イチゴは前年比56・6%増の約18億円、牛肉は同41・4%増の同191億円、緑茶は同24・3%増の同143億円、コメは同18・1%増の同31億円に、それぞれ伸びた。日本酒も同19・9%増の同186億円。日本らしさを持つこれら品目が輸出拡大のカギを握るのは間違いない。

 とはいえ、これらの品目が輸出額を伸ばし始めたのはここ数年のこと。日本ブームだからといって、単に“日本産の農産物”として輸出しても、伸びるものではない。斎藤農水相も「優良事業者の成功事例を、横に広げていくことがポイントだ」と指摘する。

 海外輸送のハンディキャップに加え、国内農業者・食品事業者の大半が中小・零細でスケールメリットが出ない。海外での日本食品の販売価格は競合品の約2倍から3倍以上と高い。現地の企業や農産品ではなく、中国、台湾や韓国、米国企業などと比べた数字だ。


 輸出拡大に成功した事業者をみると、現地商社などを介さず自前の販売網を確立したり、価格差を理解してもらうため現地で試食会やセミナーを粘り強く何回も開催している事例が圧倒的に多い。
丸山製茶はロンドンで抹茶バーを自力で開設

 コメやコメ加工品の輸出を拡大しているWakka Japan(札幌市白石区)では香港や台湾、シンガポール、米国のハワイなどに精米所を設置し、玄米で輸出して現地工場の日本製精米機で精米。国内と同レベルのおいしさのコメを地元レストランや消費者に提供している。

 自然食品志向が強い米国の消費者へも対応し、長野県伊那市に農業法人を設立。水田を借り上げて無農薬のオーガニック米をつくる事業も始めた。現地精米所を設置する取り組みは、農機大手のクボタなども進めている。

 丸山製茶(静岡県掛川市)では海外のオーガニック認証取得を見据えた緑茶生産を増やすため、地元農家と茶の栽培グループを形成し、有機栽培茶に取り組み中。環境保護への関心が高く、農業規制が厳しい欧州への輸出には有機栽培茶の成功がカギを握る。

 和牛を輸出するサンキョーミート(鹿児島県志布志市)は、海外で豪州産の“WAGYU”などが安価に流通するのを見て、価格差がある理由の説明が不可欠だと判断。日本特有の個体識別管理、和牛血統管理の仕組みなどをていねいに説明し、食品安全マネジメントシステムなどの国際品質管理規格にも積極的に対応した。その結果、輸出に不可欠な現地施設の認定を円滑に取得できたという。

 ラーメン輸出で有名な西山製麺(札幌市白石区)は、商社を介さず地元の石狩港から専用の冷凍コンテナで直接輸出して価格の引き下げや発注リードタイムの短縮に成功。新丸正(静岡県焼津市)は17年2月にカツオブシ工場として初めて欧州連合(EU)向けに輸出水産食品取り扱い施設認定を取得。フランスではミシュラン二つ星のシェフと連携して料理のレシピを開発し、ダシを活用したフランス料理の啓発・普及に努めている。

「日本産だから安全」通用せず


農林水産物・食品の輸出額が、1兆円を前に足踏みする理由はいくつかある。価格の問題に加え、しばしば指摘されるのがグローバルGAP(農業生産工程管理)、HACCPなど国際認証への理解不足と低い取得率だ。

 「この食材や食品は日本産だから安全」とPRしても、外国が求めるのはグローバルGAPなどの客観的指標。米ウォルマートや米コストコなどの国際流通大手はグローバルGAP取得を取引条件にする企業も多く、非取得では相手にしてもらえないおそれがある。

 GAP総合研究所によると全国の農家126万戸のうち、認証を取得しているのはわずか0・3%。同研究所では「このままでは東京五輪などの選手村で提供する食材の大半も外国産になりかねない」と警鐘を鳴らす。
                 

認証取得など政府も支援


 農水省による農林水産物・食品輸出強化の代表例が海外販売促進活動強化と輸出環境整備、輸出事業者への支援。日本食品海外プロモーションセンター(JFOODO)による戦略的PRのほか、品目別団体によるオールジャパンの取り組みなどを支援する。輸出環境整備にかかる科学的データの分析費用や、グローバルGAP、HACCPなど認証取得費用なども援助する。

 地理的表示保護制度活用総合推進事業も注目だ。EUとの経済連携協定(EPA)では同制度による相互認証が進むだけに、効果が期待される。低価格の中国製品などへの競争力向上が見込まれる。

 17年度補正予算では果実などの鮮度保持輸送技術開発の支援、加工食品の賞味期限延長技術の開発支援などがある。賞味期限を延長できれば輸送のハンディキャップを考慮しても現地スーパーなどの陳列期間を長くでき、現地消費者の目に留まる機会が増える。
               

(文=嶋田歩)

日刊工業新聞2018年2月16日

日刊工業新聞 記者

日刊工業新聞 記者
02月17日
この記事のファシリテーター

 17年の国・地域別輸出額は1位から順に香港、米国、中国、台湾、韓国だ。6位以下もベトナム、タイなどが占め、米国を除く国が近隣のアジア。農林水産物は低温・冷蔵などの温度管理が不可欠で、単価が低い割に輸送コストが高いことも背景にある。EUへの輸出額は452億円と全体の約18分の1だが、EPA締結を機に拡大が期待される。
 国・地域別の人気商品も重要だ。香港の人気1位商品は真珠で2位はナマコ、同様に米国は1位がブリで2位がアルコール飲料、中国の1位はホタテ貝。ベトナムや中国の人気商品には盆栽ブームの影響か植木、カナダとフランス、ドイツでは緑茶が人気商品に顔を出す。こうした国・地域別や商品別のマーケティング分析も欠かせない。
(日刊工業新聞第二産業部・嶋田歩)

この記事にコメントする

  

ファシリテーター紹介

PRmore

記者・ファシリテーターへのメッセージ

この記事に関するご意見、ご感想
情報などをお寄せください。