米国と中国、二つに分断される世界の経済圏

日本の外交、難しいかじ取り

 長期化する米中貿易摩擦の根底には、安全保障をめぐる覇権争いがある。米国は産業補助金など中国政府による自国企業への過度な優遇措置を阻止したい意向だが、中国は国家資本主義体制そのものを否定する米国の要求は受け入れられない。米中対立の解消は困難で今後世界経済は“米国経済圏”と“中国経済圏”の二つに分断される可能性がある。

 米中は貿易で相互依存状態だが、米トランプ政権は米国や同盟国のサプライチェーンから中国を外す「デカップリング」を本気で進めようとしている。中国華為技術(ファーウェイ)などハイテク企業に対する事実上の禁輸措置はその一例。特にファーウェイは第5世代通信(5G)技術で世界的に優位性があり、中国側に5Gの通信基地局を握られると安全保障上問題だと考えるからだ。米国は独自の通信技術の開発を急いでいる。

 米中対立はここにきて新局面に入った。トランプ大統領が6月末の米中首脳会談で見送った対中制裁関税「第4弾」を9月1日に発動すると表明し、その後中国を為替相場を不当操作する「為替操作国」と認定したためだ。

 米国は第4弾の効果を保つため中国の為替操作を阻止したかったが中国は破った。為替操作に当たらないよう対処してきた中国が米国との貿易戦争の長期化を覚悟し、動いた格好だ。“新冷戦”が本格的に始まったといえる。

 ただ、仮にトランプ氏が大統領選で敗北し、民主党候補が当選したとしても米国の対中強硬姿勢は変わらない。前回の大統領選の時点で米国の中国へのスタンスは対話路線から強硬路線にシフトしている。

 現在、共和党と民主党で唯一、一致している姿勢が“中国たたき”だ。米有識者からは「中国はトランプ大統領が退けば、米国は変わると期待しているようだが見通しが甘すぎる」と疑問視する声が上がる。

 米中対立が長期化すればその間に技術開発を進め、米国は西側諸国などとともに、中国は巨大経済圏構想「一帯一路」を軸にそれぞれ独自の経済圏を構築する可能性がある。19年は世界経済が米国経済圏と中国経済圏に分かれていく契機の年になるかもしれない。

 こうした中、日本は日米同盟を堅持しながら隣国の中国とも関係を悪化させてはならない立場に置かれている。米中のはざまで引き続き難しい外交のかじ取りが求められる。
(文=上智大学総合グローバル学部教授・前嶋和弘)

【略歴】まえしま・かずひろ 90年(平2)上智大外国語卒。97年ジョージタウン大院政治学部修士修了、07年メリーランド大院政治学部博士修了、14年上智大総合グローバル学部教授。静岡県出身、54歳。



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