「ファーウェイ問題」日本のチャンス、注目はソニー・シャープ・NECだ!

早稲田大学ビジネススクールの長内厚教授に聞く

 中国の通信機器メーカー・華為技術(ファーウェイ)に対する米国の制裁の余波が日本にも及んでいる。通信事業者は同社の新型スマートフォンの発売を延期。一部の企業は米国制裁が自社にも及びかねないことから、同社との取引を停止している。こうした事態について、「日本企業にとってはファーウェイのシェアを奪うチャンス」と語る早稲田大学ビジネススクールの長内厚教授に話を聞いた。長内氏はソニー出身で、同社のブラウン管テレビ事業、薄型テレビ事業に携わった経験を持ち、電機業界の動向に詳しい。16年4月より現職。

トランプ大統領の交渉カード?


Qファーウェイ問題の先行きをどう見通しますか。
 「当初、米国は交換機を問題視しており、携帯端末は別物というスタンスだった。それがここにきて話が同一線上で語られ、問題が重層化、複雑化した」
 「恐らく交換機は、国防総省などの役人が安全保障の観点から本当に懸念を抱いている。一方、端末の方は、にわかに問題として取り上げられ、トランプ大統領の米中貿易交渉のカードのような気がする。交換機は根が深く長期化しそうだが、端末の方は何かのきっかけで収束すると見る」

Q通信業界でファーウェイの存在は大きい中、同社なしで今後、日本企業はやっていけますか。
 「むしろ日本にとってはビジネスチャンスだ。一つは基地局をつくっているNECや富士通がどれだけがんばれるかだ。NECは楽天モバイルと組み、5Gの基地局装置の無線機を共同開発すると6月5日に発表した際、『コスト効率の高さ』を強調していた。これまでの日本企業なら、優れた技術力で付加価値を高めた、と言っていた。だがファーウェイのように世界で戦うには『低コスト化』が欠かせない。NECがどこまでフェーウェイの空いた穴を埋められるか注目したい」

 「もう一つの端末では、ソニーとシャープがどう出るかだ。ソニーは上位機種エクスペリア1(ワン)と500ドル(約5万4000円)を切る価格帯のエクスペリア10(テン)のうち、高機能な製品を好む日本ではワンが人気を集めるが、私はテンに注目している。グローバルに打って出るには500ドルを切る価格帯でなければいけない。製品はある。あとはどれだけ本気でグローバルで販売するか。ファーウェイがシェアを落とす中、個人的には今が、ソニーが携帯事業でグローバルに勝負する最後のチャンスと見ている」

 「シャープはこれまで国内中心に携帯事業を手がけてきた。だが自社でパネルを開発する技術があり、親会社は大量生産を得意とする鴻海精密工業だ。鴻海が有する中華圏の販売ネットワークもある。なぜファーウェイの後を狙わないのか」

ファーウェイのスマホ


日本企業への影響は



Q日本企業ではなく、携帯電話で世界首位の韓サムスンがさらにシェアを広げることになりませんか。
 「通信事業者から見ると、サムスンや米アップルがさらにシェアを高めることは好ましくない。価格決定権がメーカー側に移ってしまうからだ。かつて日本に携帯メーカーが10社もあったのは、通信事業者があえてその都度、販売戦略を見直し、どこか1社が優位に立つ状況を避けたことがある。今でも状況はそれほど変わっておらず、サムスンがファーウェイのシェアまで奪うことはないと見る」

Q日米企業の取引停止などの動きはファーウェイにどう影響すると思いますか。

 「同社はグループ内に半導体企業を持ち、いざとなったら外国に頼らなくても事業を継続できる準備を進めてきた。難題はソフトバンクグループの英半導体設計大手アームの技術。チップ設計において、いわばベースのプラットフォームを提供している。これがないと、完全にゼロベースでCPU(中央処理装置)などを開発する必要がある。スマホ向けのCPUのシェア9割を占め、アームの技術なしでどう開発するのか腕が試される」

 「一方で、注視すべきは、かつて中国がレアアースを禁輸した際に起きた日本企業に似た動きだ。自動車や電機各社はレアアースをできるだけ使わない技術開発に舵を切り、多くのブレークスルーがみられた。禁輸が溶けた後、中国がレアアースを買ってくださいと言っても、もう以前ほど必要ありませんという状況になった。ファーウェイも今回の米国による禁輸を契機に自社で技術開発を進め、飛躍的な成長を遂げる可能性はある」

独自OSは誤作動懸念


Qスマホ向け基本ソフト(OS)も独自に開発中と言われます。
 「グーグルのOS『アンドロイド』は無償公開の部分と非公開の部分があり、無償の部分はグーグルの許可なしで使える。ファーウェイ独自のOSは作れるだろう。問題はアンドロイドと互換性のある、似て非なるOSを作ってしまうこと。似ているけど根本は違うため、さまざまな誤作動が生じかねない」


2020年の米大統領選が節目に


早稲田大学ビジネススクール教授・長内厚氏


Qファーウェイ問題の次の節目は。
 「2020年の米大統領選挙だ。米国は伝統的に中近東には関心は高いが、アジアには薄い。北朝鮮問題が進まないのがよい例だ。選挙が終わればファーウェイ問題は一段落するのではないか」
(取材・大城麻木乃)

日刊工業新聞 記者

日刊工業新聞 記者
06月20日
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長内氏は「日本の端末メーカーが復活すれば、ファーウェイへの供給減で苦戦する日本の部品メーカーにとっても朗報だ」と指摘していた。また「ファーウェイが復活するまでせいぜい1、2年の勝負」とも語っていた。日本企業は経営判断が遅いとよく言われるが、迷っている時間はない。あとはやるか、やらないかだけだ。            

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