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韓国「ホワイト国」除外に米中の代理戦争あり

日本政府高官「トランプ米大統領が仲介する話でもない」と突き放す
韓国「ホワイト国」除外に米中の代理戦争あり

G20サミットで安倍首相を挟んで座る米中首脳

 政府は安全保障上の輸出手続きを優遇する措置「ホワイト国」について、韓国を除外することを近く閣議決定する見通しだ。フッ化水素など3品目の輸出手続きを厳格化した措置に続き、第2弾の見直しとなる。今後、素材や電子部品など軍事転用の恐れがある品目を輸出する際は個別の許可が必要となり、産業界への影響は一段と広がりそうだ。今回の日韓の通商対立は、韓国による杜撰(ずさん)な輸出管理に起因するが、理由はそれだけなのか。遠因は米中対立との見方も浮かび上がる。

 「(輸出)手続きでは、これまで要求されたことのない資料を求められたらしい」。ある中堅化学メーカー幹部はこう打ち明ける。韓国が非ホワイト国になれば、さらに厳格な手続きが増える恐れがあるが、大きな心配はしていない。すでに非ホワイト国への輸出実績があり、個別許可の手続きでノウハウがあるためだ。「(非ホワイト国の)台湾などに出しているのと同じようにすれば良い」と懸念を払拭(ふっしょく)する。

 ホワイト国から除外されると、食品と木材を除く全品目のうち、一部が審査対象となる可能性が生じる。化学・半導体業界で新たに対象が加われば、半導体にかかわる国際的な供給網に深刻な影響が出るのは間違いない。化学大手の首脳は「半導体は裾野が広いため、全体への影響は予測がつかない。政府間の対立が激しく、正直に言って嫌な感じだ」と不安を募らせる。

 一方、今回の日本の措置は米中貿易摩擦が遠因との見方もある。すでに輸出手続きを厳格化した高純度のフッ化水素とレジストは、回路線幅5ナノ―7ナノメートル(ナノは10億分の1)の最先端半導体の製造に不可欠な材料だ。その主な用途は人工知能(AI)と第5世代通信(5G)。米中2大経済大国が争う技術覇権の最前線の製品に搭載される。

 現在、最先端半導体を生産できるのは韓国・サムスン電子と台湾・台湾積体電路製造(TSMC)の2社。このうち「TSMCは米国側なので問題ないが、サムスンが中国に近づきつつあった」との指摘が半導体業界から聞こえる。

 このことが米国の警戒心を刺激したとみられ、その意向を忖度(そんたく)した日本が韓国向け材料の供給制限に動いたとの見方だ。中国に加担するサムスンを封じれば米国が技術覇権で優位に立ち、ひいては日本の安全保障にも寄与する。加えて韓国から北朝鮮やイランへの横流しもささやかれる。日韓対立は米中の代理戦争との構図も透けて見える。

 日本政府は8月下旬にも韓国へのホワイト国除外を発動する方針だ。ある高官は「(除外の撤回を求める)韓国からの意見書で政府方針が変わることはない。また、トランプ米大統領が仲介する話でもない」と突き放す。

 韓国は世界貿易機関(WTO)への提訴を視野に入れるが、裁定まで2―3年の時間を要するだけに、長期にわたって双方が傷つけ合う事態になりかねない。日韓の政治的対立は産業界を巻き込み、泥沼化の様相を呈している。
(取材・敷田寛明、鈴木岳志、梶原洵子、下氏香菜子)
日刊工業新聞2019年7月26日

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