米中摩擦「米国が二つの条件を飲めば中国は譲歩」

丸紅経済研究所の李シニア・アナリストに聞く

 米中は6月末に貿易協議の再開で合意し、トランプ米大統領は華為技術(ファーウェイ)への米国製品の輸出を認める方針を示した。しかし、7月に米中の高官級協議が行われたものの具体的な成果はなく、ファーウェイへの輸出規制も依然として続く。今後の米中協議の行方はどうなるのか。丸紅経済研究所の李雪連シニア・アナリストに聞いた。

Q:なぜ中国は協議再開を決めたのですか。
 「米中貿易摩擦の影響で国内総生産(GDP)成長率が漸減するなど経済減速へのプレッシャーが習近平政権に寄せられているからだ。また5月に協議が白紙に戻ったことへの責任問題を指摘するような記事が香港紙に載り、国内の政治的圧力もあったと読む」

Q:貿易協議の行方をどう捉えていますか。
 「年内に合意など期限を決めているわけではない。だらだら協議を続けたり、2、3回実施して中断したりするのではないか」

 「中国の要求は二つ。一つは米国がかけた第一弾からの関税の撤廃。もう一つは華為技術(ファーウェイ)に課す米経済制裁の撤廃だ。この二つの要求を満たせなければ、合意は難しい。裏を返せば、この二つさえ飲めば中国は他のことは譲歩するだろう。米国製品を大量に購入して米側の貿易赤字の是正に努めることや、国有企業の補助金問題、外資への技術移転の強制問題には取り組むと見る」

Q:2020年の大統領選挙を控えるトランプ大統領に対し、中国は長期戦で臨むとの声があります。
 「誤解してならないのは、中国は次の大統領もトランプ氏だと見込んでいるということだ。米国はそういう(米国第一主義を引き続き強めるという)時代に入ったと捉える向きが中国には多い。そのため『長期戦』と言っている。できればトランプ政権の時代で問題を解決したいと考えているが、できなければ次の政権に移る。しかし、次の政権でも解決は難しいだろう。米国は中国が経済的に接近していることへの危機感が年々増している。どの政権でも進展は難しいだろう」

Q:ファーウェイは、こうした事態にどう対応しようとしていますか。
 「7月に入り、ファーウェイの任正非最高経営責任者(CEO)のインタビューが米誌に載り、スマートフォンの独自OSを秋にリリースするとコメントしていた。つまりファーウェイ自身も、トランプ大統領の6月末の発言で米国が輸出規制を緩和するとは思っていない。ファーウェイも長期戦を覚悟しているだろう」

Q:独自OSはどうなりそうですか。
 「米アップルのiOSと米グーグルのアンドロイドに匹敵するOSを出すと言っている。『hongmeng(ホンモン)』という名称で、2012年に開発に取りかかり、18年8月に特許を申請している。その特許は、米国がファーウェイをエンティティリスト(禁輸リスト)に入れた5月15日の1日前にあたる同14日に中国国家知識産権局(日本の特許庁に相当)に認められた。はたして偶然だろうか。米中は表面上は反目し合っているが、ある意味、あうんの呼吸でやりとりしている気がする」
 
Q:技術的な評価は。
 「任CEOは独自OSに関し、iOSとアンドロイドよりも高速でIoT(モノのインターネット)にも対応したものと発言している。問題は、スマホはエコシステムが重要ということだ。アンドロイドもiOSも、グーグルマップやGメール、ユーチューブをはじめ、数え切れないほどのアプリがそろっている。こうしたエコシステムが独自OSでは使えない。恐らくファーウェイ自身も禁輸が解けるまでの『つなぎ』として独自OSを出すのではないか」

 「ただ、つなぎだけではおもしろくないため、IOTにも対応した次世代のOSを狙っている。将来、自動運転のハンドルはスマホになるとの見方がある中、自動運転や、さまざまな家電製品のコントローラーとして使えるような拡張性の高いものを開発してくるだろう」

Q:米中の貿易摩擦は技術の覇権争いが根底にあり、根が深いとの見方があります。先行きをどう見通しますか。
 「任CEOは今の米中の現状をこう表現している。一つの山があり中国は右から米国は左から登山して、お互い世界のトップ(頂上)を目指しているため、いずれどこかでぶつかる。できれば頂上で会いたい。でも今は中途半端な場所で狙い撃ちにあっている、と。言い得て妙だ。米中ともにトップを狙うからには、いずれどこかでぶつかる。技術の覇権争いは避けられない」
(取材・大城麻木乃)
李シニア・アナリスト

日刊工業新聞2019年7月24日(政治・経済)に加筆

  

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