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国内60万台維持が焦点、三菱自は生産体制見直しにどこまで踏み込む?

三菱自動車・安藤剛史副社長インタビュー
国内60万台維持が焦点、三菱自は生産体制見直しにどこまで踏み込む?

新型軽自動車の生産準備がほぼ完了した水島製作所

 ―今年度の生産状況は。
 「2018年度は世界で前年度比13%増の144万台を生産した。水島製作所(岡山県倉敷市)やインドネシアで生産能力を増強し、稼働は好調だった。19年度は事業環境が変化しており、生産台数は横ばいもしくは若干の微増になるだろう。いたずらに台数を追うのではなく、今の生産能力を最大限活用する。固定費を増やさず最適生産に徹することが当面の方針だ」

 ―水島製作所では19年度末に新型軽自動車の生産を予定しています。
 「ほぼ生産の準備は完了した。軽は需要があると同時に、競合他社も自信作を出している印象で競争が熾烈(しれつ)になっている。20年度以降も軽が、水島製作所の生産のメーンになるだろう」

 ―生産子会社パジェロ製造(岐阜県坂祝町)では操業を2直から1直に変更しています。同拠点の今後の展望は。
 「パジェロ製造では国内向けスポーツ多目的車(SUV)『パジェロ』の生産を打ち切った。規制などに対応するためにいつまでも作れる商品ではなかった。ただ全体に占める生産量の割合は小さく、生産打ち切りの影響は軽微だ。パジェロ製造は今後も年約8万台を維持する。一方で、SUVについては世界的にも需要が伸びている。岡崎製作所(愛知県岡崎市)だけでは生産能力が不足してしまうため、補完工場としての役割を担うパジェロ製造は今後も非常に重要だ」

 ―主力の東南アジア地域で生産の現地化を進めています。
 「同地域は収益の柱になっているだけでなく、全体の4割以上の約60万台以上を生産している。現在インドネシアでは増産しており、タイではプラグインハイブリッド車(PHV)の現地生産を検討する。ベトナムなどの市場も成長している。最近は輸入制限などもあるため、現地生産を増やす必要も出てきた。必要に応じて投資を加速し、投入車種の増加なども検討したい」

 ―提携関係にある日産自動車や仏ルノーとの生産面での相乗効果は。
 「新規投資をする際に近隣にある日産やルノーの工場に余力があるのであれば活用するなどといった相乗効果が考えられる。工場だけでなく設備単位での共用も有効だ。OEM(相手先ブランド)生産や部品の供給を行うことによって、互いのコスト抑制につながる。具体的には生産の横断組織を作り、議論を重ねている。あくまで各社のメリットになるように提携関係を手段として活用していきたい」

 【記者の目】
 米中貿易摩擦や各国の保護主義的な政策の影響が国内や東南アジア地域にも波及しており、規模ではなく効率を重視する方針だ。国内は年産60万台を維持できるかが焦点となる。一方、東南アジアは一層の現地化や電動車の投入も始まっており、コストの削減は容易ではない。当面は生産面で難局が続く。
(渡辺光太)

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安藤副社長
日刊工業新聞2019年7月25日

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