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ロボカップ世界大会を沸かせた“日常”競技、「次の世代の教育に」

機械とAIが融合する自体の要に
ロボカップ世界大会を沸かせた“日常”競技、「次の世代の教育に」

ロボカップ世界大会での「@ホーム」

 豪シドニーで開かれたロボットの国際競技大会「ロボカップ世界大会2019」が盛況のうちに閉会した。自律移動型ロボットによる「サッカー」が毎回会場を賑わせる目玉競技だが、日常シーンでのロボット技術を競う「@ホーム(アットホーム)」競技も、参戦のハードルを下げて注目度が上がっている。(取材・北川航也)

 「@ホーム」では、リビングなど家庭環境でいかに人に役立つ作業をできるかを競う。モノをつかむマニピュレーション技術が求められ、人とコミュニケーションをするための音声対話技術や画像認識技術も重視される。生活支援ロボットの実現に向け、競技から生まれる成果が期待されるが、参戦のハードルの高さがネックになっている。人の生活に密着したシーンで動作するため、特にソフトウエアでは高度な専門性が求められ、開発資金も膨らむ。

 このハードルを下げようと動いたのが中国の南開大学のジェフリー・タン准教授だ。「@ホーム」の教育用のサブリーグとして「@ホームエデュケーション」を創設した。

 ジェフリー准教授が「@ホーム」に参加し始めた頃、周りが3人以上のチームで競技に臨む中でたった2人のチームだった。「フォーミュラワン(F1)に自家用車で乗り込むようなもの。(高度な専門性を持つ)他のチームから懐疑的な目で見られていた」と振り返る。

 しかし14年のジャパンオープンでは人工知能(AI)賞を獲得。資金のない中でオープンソースを活用し得点を稼いだ。この経験を元に、資金がなくても参加できる、よりオープンな競技が必要だと考えサブリーグの「@ホームエデュケーション」を設計した。競技ルールは本リーグとの連動性を考え本リーグと同様に設定したが、初心者でも開発できるよう10項目のタスクを4項目に絞った。さらにソフトウエアはオープンソースを提供して参加ハードルを下げた。

 15年に日本大会で試験的に導入。18年に世界大会に導入され、開催地モントリオールの地元高校生など計9チームが参加。世界大会2度目となる今回は、計15チームが参戦、参加者は拡大している。

 ジェフリー准教授は「今は親からパソコンを買ってもらう時代。次はロボットを買い与えられる時代になる」と先を見据える。今の世代が当たり前のようにパソコンに触れるように、次の世代はロボットに触れるようになるという。

 そんな時代に重要となるのが「機械とAIの融合」とジェフリー准教授は見る。「@ホームエデュケーション」を通じたロボ開発はその融合を進める有効な教育と位置付ける。

 また、ジェフリー准教授は「競技をただやるのではなく、競技で生まれるモノ・人・ことを開催地に根付かせることが重要だ」とも強調する。10月の豪オープンでも「@ホームエデュケーション」が導入されることが決まった。今後も「機械とAIの融合」を推し進める場を広げていく考えだ。
日刊工業新聞2019年7月17日(ロボット)

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