ロボット社会の実現へ、WRSの挑戦が残した宿題

技術開発と社会実装、人材育成それぞれに手ごたえも

 2018年はロボット分野に新しいオープンイノベーション施策が導入された。ロボの技術力を競う競技会と、ビジネスや未来社会を提案する展示会、最新動向を学ぶフォーラムを連動して開催する「ワールド・ロボット・サミット」(WRS)が10月に実施された。新しい挑戦ならではの宿題と成果が得られている。

 WRSでは経済産業省と新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が、イノベーションを興す手法として競技会などの三つを政策パッケージとして試行した。競技会では現場に近いフィールドを用意し、ロボの性能や運用性などの実力を問うた。展示会に商談目的で集まった参加者は競技会のロボが自社のビジネスフィールドに適応できるか検討し、一般参加者にはロボが働く生の姿と、それを支える技術者の奮闘を伝えた。大会実行委員長の佐藤知正東京大学名誉教授は「新しい競技会の姿を世界に示せた」と総括する。

 18年大会は20年の本大会に向けたプレ大会の位置付けだが、23カ国地域から126チームの競技者が集まった。NEDOロボット・AI部の弓取修二部長は「その場の課題に対応するために地球の反対側からバックアップするよう、システムを拡張するチームもあった」と目を見張る。

 ジュニア部門では米国やオランダ、チリ、フィリピンなど、先進国や途上国の子どもたちが集まりロボ開発に打ち込んだ。経産省ロボット政策室の石井孝裕室長は「海外の子どもたちは自国の科技教育相に表敬されて日本での健闘をたたえられている。外務省を通じて日本への感謝の言葉を頂く。これからロボ社会を作っていく若い世代に貢献できた」と振り返る。

 技術開発と社会実装、人材育成のそれぞれに手応えがあった。政策パッケージとしては成功だ。19年は20年の本大会につなぐ重要な年になる。石井室長は「ロボ分野全体のため若手の育成や、研究開発を加速させる施策を打っていく」という。20年の飛躍に向け、研究者は課題と技術を整理し力を蓄える年になる。
(文=小寺貴之)

日刊工業新聞2018年12月19日

小寺 貴之

小寺 貴之
12月29日
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ロボット競技会の多くが研究者や技術者のシーズベースで設計されてきましたが、WRSは社会課題などのニーズベースで設計されました。社会のニーズを競技化して技術開発を促し、その姿を社会に見せることで社会実装を進める。このサイクルを回せればオープンイノベーションは強力に進むはずです。その第一歩は踏み出せました。次の課題は展示会と競技会のより深い融合です。現在は併設のような感じですが、個人的には展示会では将来ビジョンやニーズ、シーズを紹介してほしいなと思います。それによって競技会に参加している技術者を自社の事業領域やエコシステムに誘引し、新しい連携を触発してほしいです。競技会としては競技者がロボットの開発や本番対応に忙しすぎて、周りを巡る余裕があまりありませんでした。会場には面白い技術やアイデア、スポンサー候補がごろごろ転がっているので、これは大きな機会損失だと思います。大会運営側でマッチングしておくなど、連携を促すきっかけを仕込んでおく必要があるかもしれません。

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