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カフェでロボットがコーヒーを淹れるメリットとは?

QBITロボティクス会長に聞く、コーヒーロボマシンの勝算
 カフェロボットマシンを手がけるQBITロボティクス(キュービットロボティクス、東京都千代田区)が豊田合成や森トラストなどから資金調達を完了し、新資本金は約5億円になった。有力な後ろ盾を得て外食業界などにコーヒーロボマシン展開を加速する。今後の戦略を狩野昌央会長に聞いた。

 ―パートナーに豊田合成、森トラストを選んだ理由は。
 「豊田合成は独自のゴム素材『eラバー』を用いたセンサー付きハンドの技術がある。森トラストは丸の内トラストタワーをはじめ国内に33棟のタワービルを所有し、デリバリーロボットの実験も手がけており、ロボ研究に積極的だ。当社のカフェロボット展開にも強力な援軍になる」

 ―コーヒーマシンは人手不足に悩む外食業界で省人化の武器になる反面、2000万円近い初期投資の重さが負担になっています。
 「アルバイトの人件費だけで費用対効果を考えるなら確かに負担に思われるが、利用者が飲んだコーヒーのデータ情報を収集・分析できるメリットがある。実際、問い合わせをしてくるのはそうした高感度の事業者が多い。加えてアルバイトが一人前になるまでの教育には時間と費用がかかる。病気などで急に休むリスクもある。店長はアルバイト勤務のローテーションの勤務表づくりが重労働だ。これらを総合的に考えないと高い、安いの判断はできない」

 ―一方で初期投資のハードルを下げる研究も始めています。
 「キヨスクのように客回転が速い場所ではメニュー数はさほど必要ないが、注文してすぐに提供することが求められる。メニューが少ないのだから、単腕の省スペース型ロボシステムで事足りる。費用も安くできる。当社のシステムは現在でもコーヒーなど飲料以外にソフトクリームも出せるが、豊田合成のハンドを使うことで例えばかき氷のような食材や、需要に合わせていろんなサイズや固さ、重量のメニューを提供できるのではないかと思っている」

 ―客回転が見込める大都市のターミナル駅やショッピングセンターは数が限られています。各社が一斉に参入してきたら飽和状態になりませんか。
 「私も最初はそう思っていた。しかし利用者に聞くと、潜在市場はもっと大きい。東京駅なら、何番線のホームか、北口か南口かなどと考えただけでも、複数台を出店できる。高層ビルでも実際にはフロアをまたいで勤務時間にコーヒーを飲む人は少なく、多くが自分のフロアで飲む。ビルの棟数でなく、フロア数で計算すれば市場はぐんと大きくなる。自動販売機との競争になる」

狩野昌央会長

【記者の目/短期貸し出しなどの活用法も】
 カフェロボットマシンユーザーは、外食産業から鉄道会社や小売り、イベント業界などに広がりつつある。ロボットというと省人化のイメージが強いがキュービットのロボは人間と一緒に働ける協働型で、繁忙時に3人分の作業のうち1人を振り替えるといった利用法もできる。イベントなどで数日間や数週間のみ貸し出すなどの活用法もありそうだ。
(嶋田歩)

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