ボルボが「プレミアムカー」に進化できた理由
ボルボ・カー・ジャパン 木村隆之社長インタビュー
**『最高の顧客が集まるブランド戦略』著者に聞く
―出版の経緯は。
「一つは共同執筆者で自動車ジャーナリストの小沢コージ氏に『一緒に書きましょう』と誘われたためだ。もうひとつは、社長になって5年という節目を振り返り、改めてボルボの良さを発信したいと思った。今後は商品だけでなく、ブランドの訴求など企業広報を強化する方針だ。ボルボの魅力を伝えることは人材の採用や育成にもつながる」
―著書では日本の消費を理解する重要性を訴えています。
「日本は世界的にも消費行動の二極化が進んでいる国だ。例えば欧州は高級料理店に行くような年収が高い富裕層は高級車に乗っているし、高級な服を着ている。だが、日本人はこだわる買い物にはお金をかけ、そうでない買い物は出費を抑える。中間層であっても自身の趣味や嗜好(しこう)に合わせて、消費にメリハリをつける傾向にある。そのため日本では年収に合わせた平均的な商品ではなく、よりブランド価値の高い高級品を訴求するか、こだわりのない消費に対応するかが重要になる」
―「日本カー・オブ・ザ・イヤー」を2年連続で受賞するなどボルボは日本でブランド力を高めています。
「消費行動の二極化が進む日本でブランドを高めるには、プレミアムを目指した方がいい。14年の社長就任時は、ボルボブランドとして今の立場は危ないと感じた。伊アルファロメオと比べると情緒的なブランド価値は低く、独フォルクスワーゲン(VW)と比べると性能的なブランド価値は劣る。両方を兼ねそろえたプレミアムとは言いがたく、準プレミアムという位置づけだった。性能面では商品性は高いため、特に情緒的なブランドを上げる必要があった」
―具体的な施策は。
「例えば、一貫性のある広告宣伝を徹底した。これまでは新車の投入タイミングに広告を打っていたが、定期的に広告宣伝を打ち出し、ブランドや会社を知ってもらうことに切り替えた。また、ボルボには『安全性が高い』という既存のブランドイメージがある。実際、先進的な安全装備が搭載できる車には、全車で標準搭載しており、どのクラスの車を買っても、安全装備は等しく搭載されている。このブランドを首尾一貫で伝え、最大化することも重視した。自動車事故や自動運転が注目される現代では安全性の高さは、競合他社との差別化のポイントとなる」
―今後のブランド戦略は。
「リースや定額制料金(サブスクリプション)のサービスで、ボルボの存在感を高める。車の所有から利用に傾向が変わる中で、ボルボは月額制リースで車を利用できる『スマボ』を提供する。ボルボ車のお客さまは最新鋭の安全装備を搭載したいという需要がある。定期的に安全装備が刷新された車へ乗り換えできるようにサービスも拡充している。安全性が高い車を常に感じてもらえるだろう」
「ボルボに興味がある人に読んでほしいのは当然だが、経営者を目指す若手のビジネスマンに読んでほしい。経営者は“孤独”とされているが、次代の経営者の育成に貢献できればと考えている」(聞き手・渡辺光太)
◇木村隆之(きむら・たかゆき)氏 ボルボ・カー・ジャパン社長
87年(昭62)阪大工卒、同年トヨタ自動車入社。03年にノースカロライナ大MBA取得。07年にファーストリテイリングへ入社し営業支援統括部長、08年には日産自動車に入社しアジア・パシフィック日産社長などを務める。14年からボルボ・カー・ジャパン社長。大阪府出身。
『最高の顧客が集まるブランド戦略 ボルボはいかにして「無骨な外車」からプレミアムカーへ進化したのか』(幻冬舎 03・5411・6222)
―出版の経緯は。
「一つは共同執筆者で自動車ジャーナリストの小沢コージ氏に『一緒に書きましょう』と誘われたためだ。もうひとつは、社長になって5年という節目を振り返り、改めてボルボの良さを発信したいと思った。今後は商品だけでなく、ブランドの訴求など企業広報を強化する方針だ。ボルボの魅力を伝えることは人材の採用や育成にもつながる」
―著書では日本の消費を理解する重要性を訴えています。
「日本は世界的にも消費行動の二極化が進んでいる国だ。例えば欧州は高級料理店に行くような年収が高い富裕層は高級車に乗っているし、高級な服を着ている。だが、日本人はこだわる買い物にはお金をかけ、そうでない買い物は出費を抑える。中間層であっても自身の趣味や嗜好(しこう)に合わせて、消費にメリハリをつける傾向にある。そのため日本では年収に合わせた平均的な商品ではなく、よりブランド価値の高い高級品を訴求するか、こだわりのない消費に対応するかが重要になる」
―「日本カー・オブ・ザ・イヤー」を2年連続で受賞するなどボルボは日本でブランド力を高めています。
「消費行動の二極化が進む日本でブランドを高めるには、プレミアムを目指した方がいい。14年の社長就任時は、ボルボブランドとして今の立場は危ないと感じた。伊アルファロメオと比べると情緒的なブランド価値は低く、独フォルクスワーゲン(VW)と比べると性能的なブランド価値は劣る。両方を兼ねそろえたプレミアムとは言いがたく、準プレミアムという位置づけだった。性能面では商品性は高いため、特に情緒的なブランドを上げる必要があった」
―具体的な施策は。
「例えば、一貫性のある広告宣伝を徹底した。これまでは新車の投入タイミングに広告を打っていたが、定期的に広告宣伝を打ち出し、ブランドや会社を知ってもらうことに切り替えた。また、ボルボには『安全性が高い』という既存のブランドイメージがある。実際、先進的な安全装備が搭載できる車には、全車で標準搭載しており、どのクラスの車を買っても、安全装備は等しく搭載されている。このブランドを首尾一貫で伝え、最大化することも重視した。自動車事故や自動運転が注目される現代では安全性の高さは、競合他社との差別化のポイントとなる」
―今後のブランド戦略は。
「リースや定額制料金(サブスクリプション)のサービスで、ボルボの存在感を高める。車の所有から利用に傾向が変わる中で、ボルボは月額制リースで車を利用できる『スマボ』を提供する。ボルボ車のお客さまは最新鋭の安全装備を搭載したいという需要がある。定期的に安全装備が刷新された車へ乗り換えできるようにサービスも拡充している。安全性が高い車を常に感じてもらえるだろう」
「ボルボに興味がある人に読んでほしいのは当然だが、経営者を目指す若手のビジネスマンに読んでほしい。経営者は“孤独”とされているが、次代の経営者の育成に貢献できればと考えている」(聞き手・渡辺光太)
◇木村隆之(きむら・たかゆき)氏 ボルボ・カー・ジャパン社長
87年(昭62)阪大工卒、同年トヨタ自動車入社。03年にノースカロライナ大MBA取得。07年にファーストリテイリングへ入社し営業支援統括部長、08年には日産自動車に入社しアジア・パシフィック日産社長などを務める。14年からボルボ・カー・ジャパン社長。大阪府出身。
『最高の顧客が集まるブランド戦略 ボルボはいかにして「無骨な外車」からプレミアムカーへ進化したのか』(幻冬舎 03・5411・6222)
日刊工業新聞2019年7月15日