コメ離れ防ぐ…「無洗米」開発秘話

東洋ライス、SDGsの達成へ

 「“氷の天ぷら”を揚げるようなものだと言われた」。東洋ライス(東京都中央区)の雜賀(さいか)慶二社長は、40年前の周囲の反応を思い出す。洗わずに炊ける無洗米の開発に乗り出した当初、無謀な挑戦と思われたという。

 雜賀社長は戦後、中学を卒業すると家業である精米機の販売や修理業を始めた。コメに混ざった石を除去してほしいと米屋に言われ、石抜き機を発明したことで社業を発展させた。

 無洗米は和歌山県と淡路島の海峡が「黄土色」だったことに衝撃を受け、開発を始めた。1970年代、工業化による水質汚染で海の色まで変化していた。コメは表面の米ぬかを洗い流すためにとぐ。とぎ汁は下水で浄化されると思われがちだが、下水処理場では取りきれず、赤潮やアオコの発生を招いていた。とぎ汁がすべての原因ではないが、環境保全の思いから無洗米の開発に挑戦した。

 10年以上を費やし、白米を筒内で高速回転させて米ぬかをはがす製法を確立し、1991年に無洗米を発売した。水質保全をアピールしたが、小売り側は米とぎの手間を省く“時短”による便利さを宣伝した。

長期保存の効果


 他のメリットにも気づいた。米ぬかは酸化を促進するため、コメが傷みやすい。米ぬかをはがした無洗米は鮮度が保たれ、長持ちする。無洗米は環境保全、時短、長期保存の効果があり「消費者に不利益がない」(雜賀社長)と胸を張る。

 業務用でも評価を得た。無洗米を採用した弁当チェーンのプレナスは節水効果を認めている。また、従業員による洗い方や水分量の違いがなく、炊き上がりや味のばらつきの心配もなくなった。

 東洋ライスは発売から四半世紀が過ぎた今、あらためて無洗米の社会的価値を発信している。18年11月に「無洗米宣言」を公表し、無洗米が環境負荷の低減に貢献することを訴えた。消費者や飲食店は無洗米の購入によって環境保全に貢献でき、持続可能な開発目標(SDGs)の目標6(水の衛生)や12(生産・消費)などの達成につながる。

コメ離れ歯止め


 積極的なPRの背景にあるのが、コメの消費量の減少だ。雜賀社長は「多くの人に無洗米の良さを知ってもらい、コメ離れを防ぎたい」と語る。同社によると主食用コメに占める無洗米のシェアは6%ほど。SDGsの認知度が高まり、社会課題解決に貢献したい企業が無洗米を選択するようになるとシェアが拡大する。無洗米がコメの消費減少に歯止めをかけるかもしれない。

日刊工業新聞2019年7月5日

松木 喬

松木 喬
07月12日
この記事のファシリテーター

7月5日のSDGs面から1本。SDGsが知られるようになり、既存商品でも社会貢献を再発信できるチャンスが生まれています。正直、無洗米は時短のメリットしか知りませんでした。それが水質保全、節水、鮮度維持などにも効果があると分かりました。米は日本の文化です。米離れに歯止めをかけると、無洗米は日本文化を守る貢献もできます。

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