もみ殻で炭素材料を量産、ソニーがライセンス先募集

細菌やウイルス、においも取り除く

 ソニーはコメのもみ殻でつくった炭素材料の量産技術を確立した。炭素材料は水中の汚れ(有機分子)、細菌やウイルス、においも取り除くため、水・空気の浄化、衣類、化粧品など幅広い製品に採用できる。もみ殻は世界で年1億トン以上排出されており、未利用資源の有効活用につながる。ソニーは普及させるため炭素材料を製品化する企業を募っている。

 新しい炭素材料は無数の微小な穴を持つ多孔質構造。穴でにおい物質などを吸着する原理は活性炭と同じ。ただし穴のサイズが異なる。活性炭は2ナノメートル以下(ナノは10億分の1)が多いが、新しい炭素材料は2ナノメートル以下、2ナノ―50ナノメートル、約1マイクロメートル(マイクロは100万分の1)と小・中・大と3種類の穴がある。

 小さな活性炭の穴では除去しづらいたんぱく質、菌、ウイルスも吸着できる。しかも活性炭よりも吸着が速く、量も多い。ソニーは新材料をトリポーラス(3種の細孔の意味)と名付けた。

 もともと同社は、リチウムイオン電池の負極材を探求する過程でもみ殻と出会った。もみ殻の内部には多くシリカが存在する。薬剤処理などでシリカを除いて3種の穴を持たせる製造技術を開発。2014年、発明協会から「21世紀発明奨励賞」を受賞した。

 その後、量産技術を検討。もみ殻は薬剤処理のため水に入れると浮き、乾燥させようと風を吹き付けると飛ぶため、扱いが難しい。そこでもみ殻を固め、扱いやすくする方法を見いだした。ソニー知的財産インキュベーション部の山ノ井俊ビジネスプロデューサーは「活性炭の製造設備を使えるのでコストを抑えられる」と強調する。

 水浄化のろ材、空気清浄フィルターなど加工や最終製品の特許も出願してきた。同部の矢藤有希統括部長は「特許化で知財を可視化すると他社に説明しやすくなる」と語る。浄化や消臭はソニーの事業領域とは違うので、ライセンス契約によって他社に製品化してもらおうと特許を出願した。

 すでに協業先が現れた。ミツヤコーポレーション(堺市中区)はトリポーラスを練り込んで防臭効果を持たせた繊維を開発した。ロート製薬はにおいの原因菌の捕捉効果があるトリポーラスを配合したボディーウォッシュを商品化した。

 トリポーラスは生物資源の有効活用だけでなく、途上国ではもみ殻の運搬や加工で雇用創出の可能性がある。ただし、普及しないと環境や社会的な価値は生まれず、開発成果が役立たない。炭素材料の価値を認める協業先が増えており、普及が進みそうだ。
(文=松木喬)

日刊工業新聞2019年3月22日

  

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