ジェイテクト、トヨタ保有の「豊精密」全株取得で何が変わる?
トヨタグループ内の歯車技術を集約
トヨタ自動車は10日、完全子会社でディファレンシャルギア(デフ、差動装置)を手がける豊精密工業(愛知県瀬戸市)の全株式を、ジェイテクトに売却することで合意したと発表した。譲渡時期は2020年1月をめどとし、売却額など詳細は今後詰める。
豊精密の従業員は957人で、18年3月期の売上高は469億円だった。人員や工場、設備など全てをジェイテクトに移管する見通し。ジェイテクトが手がけるトルクコントロールデバイスと、豊精密のデフを一体で設計・開発、生産することで、小型軽量化、効率化などの付加価値向上を見込む。
トヨタグループ内の歯車技術を集約し、電動化を見据えた減速機構の開発も進める。
デンソーは20日、愛三工業と、パワートレーン事業の統合と、同社に対する出資比率の引き上げについて検討を始めることで基本合意したと発表した。デンソーが手がける燃料ポンプモジュールなど一部事業の愛三工業への譲渡のほか、トヨタ自動車が保有する愛三工業の全株式の取得を視野に入れる。今秋の正式契約を目指す。
燃料ポンプモジュールなど一部製品の開発、生産、販売の一連の事業を愛三工業に譲渡することを検討する。対象品目や規模などは、今後詰める。
加えて現在はトヨタが愛三工業に28・8%を出資しているが、この全株式をデンソーが取得する方向で調整する。全株を取得する場合、デンソーの出資比率は現状の8・7%から37・5%に高まる。
電気自動車(EV)など電動車シフトが加速する中、重複事業の統合で競争力強化を狙う。さらに両社の連携を加速し、開発や経営の効率向上につなげる。トヨタは経営の効率化や競争力強化に向け、グループ内で「ホーム&アウェー」と呼ぶ事業再編を加速している。
2018年はトヨタ自動車グループの再編が加速した。トヨタが6月に、パワーコントロールユニット(PCU)など広瀬工場(愛知県豊田市)で担う主要な電子部品事業をデンソーに集約する検討を始めたと発表したのを皮切りに、グループ内で事業集約や連携の動きが進む。トヨタが掲げる「ホーム&アウェー」戦略の一環で、同社の「モビリティーカンパニー」への変容を前にした布石だ。
トヨタは6月にアフリカ市場での営業関連業務の豊田通商への全面移管を決め、11月にはトヨタ車体へのバン事業の移管を発表。選択と集中の姿勢を明確に打ち出した。
一方、各グループでは連携の動きが盛んだ。デンソー、アイシン精機、ジェイテクト、アドヴィックス(愛知県刈谷市)の4社が自動運転技術、デンソーとアイシンが電動化技術の合弁会社を、19年3月にそれぞれ設立することを決めた。アイシン・エィ・ダブリュとアイシン・エーアイ(愛知県西尾市)は同年4月に経営統合し変速機事業を再構築する。各社の強みを合わせて提案力を高める。
トヨタの再編の動きに対し、ある自動車業界アナリストは「トヨタは『モビリティーカンパニー』として、プロデューサーになろうとしているのではないか」と指摘する。
事業集約でグループの役割が大きくなれば、部品各社の競争力がトヨタの競争力に直結する。一方で一部の部品メーカーや取引先などからは「トヨタから横串を通した生産技術や、モノづくりの力がそがれるのではないか」と懸念する声も漏れる。
自動運転や電気自動車(EV)などを軸とする次世代競争で勝ち抜くには、さらなる経営の効率化が欠かせない。19年以降もトヨタによる選択と集中は続くだろう。トヨタには“プロデューサー”として求心力を保ちつつ次世代に向けた体制を構築できるか、グループ各社にはトヨタ以外の顧客へも存在感を打ち出せる部品メーカーとしての競争力強化が、それぞれテーマになりそうだ。
(文=名古屋・政年佐貴恵)
豊精密の従業員は957人で、18年3月期の売上高は469億円だった。人員や工場、設備など全てをジェイテクトに移管する見通し。ジェイテクトが手がけるトルクコントロールデバイスと、豊精密のデフを一体で設計・開発、生産することで、小型軽量化、効率化などの付加価値向上を見込む。
トヨタグループ内の歯車技術を集約し、電動化を見据えた減速機構の開発も進める。
日刊工業新聞2019年7月11日
デンソーは「愛三工業」取得
デンソーは20日、愛三工業と、パワートレーン事業の統合と、同社に対する出資比率の引き上げについて検討を始めることで基本合意したと発表した。デンソーが手がける燃料ポンプモジュールなど一部事業の愛三工業への譲渡のほか、トヨタ自動車が保有する愛三工業の全株式の取得を視野に入れる。今秋の正式契約を目指す。
燃料ポンプモジュールなど一部製品の開発、生産、販売の一連の事業を愛三工業に譲渡することを検討する。対象品目や規模などは、今後詰める。
加えて現在はトヨタが愛三工業に28・8%を出資しているが、この全株式をデンソーが取得する方向で調整する。全株を取得する場合、デンソーの出資比率は現状の8・7%から37・5%に高まる。
電気自動車(EV)など電動車シフトが加速する中、重複事業の統合で競争力強化を狙う。さらに両社の連携を加速し、開発や経営の効率向上につなげる。トヨタは経営の効率化や競争力強化に向け、グループ内で「ホーム&アウェー」と呼ぶ事業再編を加速している。
日刊工業新聞2019年5月21日
トヨタは“プロデューサー”
2018年はトヨタ自動車グループの再編が加速した。トヨタが6月に、パワーコントロールユニット(PCU)など広瀬工場(愛知県豊田市)で担う主要な電子部品事業をデンソーに集約する検討を始めたと発表したのを皮切りに、グループ内で事業集約や連携の動きが進む。トヨタが掲げる「ホーム&アウェー」戦略の一環で、同社の「モビリティーカンパニー」への変容を前にした布石だ。
トヨタは6月にアフリカ市場での営業関連業務の豊田通商への全面移管を決め、11月にはトヨタ車体へのバン事業の移管を発表。選択と集中の姿勢を明確に打ち出した。
一方、各グループでは連携の動きが盛んだ。デンソー、アイシン精機、ジェイテクト、アドヴィックス(愛知県刈谷市)の4社が自動運転技術、デンソーとアイシンが電動化技術の合弁会社を、19年3月にそれぞれ設立することを決めた。アイシン・エィ・ダブリュとアイシン・エーアイ(愛知県西尾市)は同年4月に経営統合し変速機事業を再構築する。各社の強みを合わせて提案力を高める。
トヨタの再編の動きに対し、ある自動車業界アナリストは「トヨタは『モビリティーカンパニー』として、プロデューサーになろうとしているのではないか」と指摘する。
事業集約でグループの役割が大きくなれば、部品各社の競争力がトヨタの競争力に直結する。一方で一部の部品メーカーや取引先などからは「トヨタから横串を通した生産技術や、モノづくりの力がそがれるのではないか」と懸念する声も漏れる。
自動運転や電気自動車(EV)などを軸とする次世代競争で勝ち抜くには、さらなる経営の効率化が欠かせない。19年以降もトヨタによる選択と集中は続くだろう。トヨタには“プロデューサー”として求心力を保ちつつ次世代に向けた体制を構築できるか、グループ各社にはトヨタ以外の顧客へも存在感を打ち出せる部品メーカーとしての競争力強化が、それぞれテーマになりそうだ。
(文=名古屋・政年佐貴恵)
日刊工業新聞2018年12月18日