物流ドローン、海外先行でどうする日本

コストや規制が課題

 海外で“空飛ぶクルマ”や大型飛行ロボット(ドローン)の開発が進んでいる。欧エアバスは仏パリで17日に開幕する「パリエアショー」に1人乗りの自律式電動垂直発着機「Vahama」を展示する予定。米アマゾンも新型ドローンによる宅配を数カ月以内に始める考えだ。対して日本では過疎地での荷物配送実験などにとどまる。日本での物流分野のドローン普及は、2020年代後半以降になりそうだ。(文=編集委員・嶋田歩)

 物流ドローンの開発が進むのは、欧米が主。米国ではタクシー配送会社のウーバーが携帯電話で空飛ぶタクシーを利用できる世界の実現に向け、20年にロサンゼルスなどで実証試験を行い、23年に商用運航する予定。航空機メーカーやヘリコプターメーカーの米ベル・ヘリコプターなどが機体開発の意向を示している。

 欧州ではエアバスが「エアタクシー」のプロジェクトを立ち上げ済みで、飛行試験も実施。独ボロコプター、米キティホークのベンチャー企業でも2人乗り無人機の開発が進んでいる。中国のベンチャー企業も垂直離着陸機(VTOL)を開発した。

 日本は18年9月に無人地帯のドローン自律飛行が原則可能になり、日本郵便や楽天などが福島県南相馬市と埼玉県秩父市でそれぞれ配送実験を始めている。ただ飛行エリアは山奥や過疎集落、離島などばかり。住宅地や都市部上空の飛行は土地所有権やプライバシー保護の問題があり、ハードルは高い。

 政府は有人地帯でのドローン自律飛行の目標時期を22年度と定める。「その場合も、人が少ない場所で始まると考えるのが無難だ」と三菱総合研究所の大木孝主任研究員は指摘する。

 クルマ社会が発達し、交通渋滞が深刻な欧米都市と比べ、日本は鉄道や地下鉄、バスが浸透し、荷物受け取りでコンビニエンスストアも網の目状に張り巡らせている。東京や大阪内の移動ならば、タクシーや鉄道を使えば事足りる。

 機体やインフラ費用が高いのもネックだ。「ドローン物流を普及させるには、一段のコスト引き下げが必要」(大木主任研究員)。配送料では宅配便や郵便と比べて競争力のある、価格設定が不可欠だ。

 ビジネスとしてドローン物流が成り立つのは公的援助による離島や過疎地の輸送、医療用品や血液などの緊急輸送に限られると見るドローン企業は多い。

 ブルーイノベーション(東京都文京区)の熊田貴之社長は「宅配ドローンが日本に普及するのは22年度より先になるだろう。実施には特区などの規制緩和や地方自治体の積極的な姿勢が不可欠」と指摘する。自律制御システム研究所の太田裕朗社長も「人口密集地帯を飛ぶには部品落下などに備えて航空機並みの品質保証が求められ、その研究費用も必要になる」と語る。

 海外で言われる“空飛ぶクルマ”は積載重量が100キロ―200キログラム、1―4人乗りで飛行速度は100キロメートル、飛行高度は400―600メートルを想定する。なじみの深い空撮用ドローンや農業用ドローンより、はるかに高い空を飛ぶわけで、有人機やヘリコプターとの調整も課題だ。

日刊工業新聞2019年6月17日

  

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