日立がIT領域に1兆円投資、「巨人とは違った」成長戦略の中身

M&Aと「ルマーダ」軸に

 日立製作所がITセクターで海外事業を拡大する。2021年度までの3年間でM&A(合併・買収)など事業拡大投資に8300億円、IoT(モノのインターネット)基盤「ルマーダ」関連投資に1500億円、合計約1兆円をIT領域に投資して成長の起爆剤にする。ITセクターで、21年度には海外売上高を18年度比の約2倍に当たる1兆1000億円に引き上げる。(文=川口拓洋)

 「IBMやアクセンチュアの成功モデルに学びながらも、これらの巨人とは違った成長を実現したい」。こう意気込むのは、ITセクターの責任者を務める塩塚啓一副社長だ。米大手IT企業の背中を追いながらグローバルトップクラスのソリューションプロバイダーを目指す。「ITセクター」は、日立の金融・社会・サービス&プラットフォームビジネスユニットや日立ソリューションズ、日立システムズなどを束ねた事業単位だ。

 一方で塩塚副社長は課題の一つとして、海外の事業体の強化を挙げる。18年度の従業員数ではアクセンチュアが約46万人、IBMが約35万人、日立は約7万6000人と大きな差がある。特に、海外に絞ると日立の人的リソースは2万3000人。「アクセンチュアやIBMなどほかの会社と比べても海外のデジタル人材は見劣りしている」(塩塚副社長)という。

 日立は北米・アジアを中心に海外事業を強化しており、17年9月には産業IoTの企業「日立ヴァンタラ」を設立。18年10月には米リーンクラウドを買収、19年1月にはインド最大の国営商業銀行のインドステイト銀行と合弁会社を設立するなど人的リソースの拡大を進めてきた。だが、いまだ十分とはいえない状況が続く。

 そのため、21年度までにまずは人的リソースを1万人増の4万人に拡大する。約8300億円の成長投資を確保し、M&Aなどを積極展開する。「フロント人材やデジタル人材を抱える企業を買収する。覚悟をもって行う」(塩塚副社長)とする。

 成長するグローバル市場で、売り上げを拡大するためのもう一つのカギがIoT基盤「ルマーダ」事業の普及だ。ルマーダはプロダクト運用などの「オペレーションテクノロジー(OT)」にITを組み合わせ、現場のノウハウや知識を商材化する取り組み。ルマーダで重要になるのが、「ユースケース」と「ソリューションコア」の蓄積だ。可能な限り新たなシステムの開発をなくして多くの顧客に価値を素早く提供する。

 例えば、医療装置向けや発電設備向け、産業設備向けの故障予兆診断に関するユースケースは他のさまざまな業種業態の企業でも活用できる。18年度末でのユースケースは650件超、ソリューションコアは70種を用意する。このルマーダの展開をグローバルでも加速していく。M&Aによる事業リソース確保により、新規顧客の獲得を加速する。

 ITセクターでは21年度に売上高2兆6000億円、そのうち海外売上高比率は42%を計画する。国内では強さを見せる日立だが、海外でも計画通りにいくのか。グローバルでトップクラスの規模・収益を確立するための核となる3年間が始まった。

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日刊工業新聞2019年6月13日

  

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