日立が大型買収、ロボットビジネスのどこにチャンスを見た?

事業ポートフォリオの入れ替え加速か

 日立製作所は24日、米国のロボットシステムインテグレーター(SI)企業のJRオートメーション(ミシガン州)をクレストビューから買収すると発表した。買収金額は約1582億円。JRオートメは産業用ロボットを活用した生産ラインや物流システム構築を手がけており、日立は同社を買収することで高成長が見込める北米のロボットSI事業へ参入する。買収に係る認可手続きなどを経て、年内に買収を完了する予定。

 日立は日立産機システムが3月に買収契約を結んだ日本のロボットSI、ケーイーシーとともに、グローバル規模でロボットSI事業を展開する。17年に空気圧縮機を手がける米サルエアーを買収し北米の産業用プロダクト事業に参入済みで、JRオートメのSI技術やノウハウ、顧客リソースを生かすことで、日立グループが手がける工場自動化(FA)ソリューションの展開を進める。

 JRオートメは生産ライン全体の設計、構築、調整が可能で、ロボ活用の溶接や組み立て工程にも独自の強みを持つ。従業員は約2000人で、18年の連結売上高は約670億円。

 自動車や航空機、eコマース、医療機器業界と取引があり、日立の研究開発技術やリソースを活用することで相乗効果と、高付加価値化を目指す。

日刊工業新聞2019年4月25日



世界の自動化需要、どこに可能性?


 世界の産業界では自動化に対する需要は根強く、産業用ロボットは中長期で高水準の成長が続く見通しだ。国際ロボット連盟(IFR)は、産業用ロボットの世界販売台数が21年まで年平均14%で伸びると予測する。自動車や電機・電子産業での更新需要に加え、金属加工や食品産業といった、これまであまりロボット活用が進まなかった分野での用途の拡大が見込まれる。

 地域別ではロボットの導入余地が依然大きい中国に加え、インドやベトナムなどのアジアで車や電機・電子産業の発展に伴い、「中期的なグローバル需要の拡大をけん引する」(業界アナリスト)。

 世界最大市場の中国では、これまで人手不足や人件費の上昇などを背景に需要が拡大。政府の産業高度化政策「中国製造2025」も企業投資を後押し、急成長を支えた。

 ただロボットメーカー幹部は、「ロボット導入による自動化の効果がどこまで出ているのか」と指摘。ブームに乗って導入を急いだ半面、ロボットを使いこなせていない部分もあると分析する。

 今後、景況感が改善すれば市場が急拡大することも予想されるが、安川電機の小川執行役員は「いったん踊り場を迎えたこともあり、ユーザーはこれまでよりもう一段、質の高い自動化を求めるようになる」と指摘。17年にみられた“爆買い”のような動きではなく、今後は質が問われると展望する。

 一方、今後の市場のけん引役として期待されるのが協働ロボットだ。安全柵を設けることなく人と同じ空間で活用でき、これまで人が手がけてきた作業の代替や補助的な役割が見込まれる。IFRも完成車メーカーが最終組み立てや仕上げ作業のために、「協働ロボットへの投資を広げる」と予想する。

 ロボット各社も品ぞろえの拡充や新規参入が相次ぐ。ファナックは可搬質量の異なる機種を増やすほか、川崎重工業は垂直方向の可動領域を広げた機種、安川電機は移設が容易な機種を投入した。デンソーウェーブ(愛知県阿久比町)は17年、不二越は18年に協働ロボットを発売し、三菱電機も開発を進める。矢野経済研究所(東京都中野区)は協働ロボットの世界市場が24年に18年比約8・5倍の8500億円に拡大すると予測する。

 また、IFRは人工知能(AI)の活用や視覚認識技術の発達などによるロボットの高機能化が、「生産性の向上やロボットの応用分野の拡大に寄与する」(津田純嗣IFR会長=安川電機会長)と指摘する。

 ファナックはプリファード・ネットワークス(東京都千代田区)と共同で、AIを使い箱にバラ積みされた部材をロボットで効率的に取り出せるアプリケーション(応用ソフト)を開発し、提供を始めた。三菱電機はロボットでコネクターを組み立てる作業にAIを活用して効率化するシステムを開発するなど、用途の拡大を積極化する。

日刊工業新聞2019年1月14日



ロボットSIの統計は?


  FA・ロボットシステムインテグレータ協会(SIer協会)は5月からロボットシステムに関する統計を始める。会員を対象に毎月調査を実施。ロボットシステムの受注高や出荷高、1システム当たりのロボットの使用台数などを調べる。ロボットシステムを対象とした統計は初という。

 久保田和雄会長(写真、三明機工社長)は「ロボットシステムの受注額は一般的にロボット1台の5―20倍と言われているが分かっていない。統計でシステムインテグレーターの仕事の規模を調査したい」と述べた。

 会員限定の機能として、会員各社の業務内容などを検索できるネットワークシステムの運用を5月15日にも始める。対応可能な業務やエンジニア数、所在地などを条件検索でき、会員間の協業やネットワークの構築を後押しする。

 同協会は2018年7月に設立。協力会員を含めた会員数は設立時の144社から207社に拡大した。

日刊工業新聞2019年4月22日



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明 豊

明 豊
04月25日
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産業インフラ系のフロント強化、JRオートメーションの顧客を得て日立自体は何を強みに打ち出していくのか。日立産機システムやこの4月に分社した大型産業機器の子会社「日立インダストリアルプロダクツ」などが持つFA関連のプロダクツを売っていくのか、それとも米国でIoTプラットフォームを展開する日立ヴァンタラを核にソリューションを提案していくのか。より大きな視点でみればシーメンスとの競合性が高まってくる。そして日立化成の売却報道も。今年度からの新中計でポートフォリオの入れ替えが加速する。

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