「鴻海離れ」できるの?シャープ社長の言葉とは裏腹な現実

優先株買い戻しも、成長戦略は不透明

 シャープの戴正呉会長兼社長は11日、都内で会見し、親会社の台湾・鴻海精密工業から一定の独立性を保ちながら経営を進める方針を示した。シャープは同日、優先株を6月中に全て買い戻して消却すると発表。経営再建を完了させた上で、戴会長は「(今後は)親会社の支援をあまり受けず、もっと独立性をもって頑張りたい」とした。ただ、今後の成長には鴻海の経営資源を有効活用することが不可欠。バランスのとれた経営のかじ取りが求められる。

鴻海董事に復帰


 鴻海が10、11日に台湾で投資家向け説明会を開催するのに合わせ、報道陣の取材に応じた。鴻海は21日に開催する株主総会を経て、戴会長を董事(取締役)に復帰させる見通し。ただ戴会長は非常勤の董事として鴻海の経営には深く携わらず、シャープの経営に専念する。

 シャープは経営危機のさなかの2015年、債務を優先株に振り替えて資本を増強した。みずほ銀行と三菱UFJ銀行が保有する優先株を、これまで段階的に消却してきたが、残された約970億円分の株式を21日付で消却する。「負の遺産」を解消することで、機動的な投資戦略が描きやすくなる見通しだ。

 戴会長は「(シャープ社長就任以来)3年間の変革で達成できたことはうれしい」と話した。今後、M&A(合併・買収)や新規の設備投資について「シャープの資金でやりたい」とし、鴻海から独立した経営を進めることを強調した。

 シャープは25日の株主総会を経て、鴻海グループから招いたウー・クォ・ファイ氏、林忠正氏、陳偉銘氏の3人を新たに取締役とする。戴会長は次期社長は日本人に譲る考えを示しているが、役員構成で鴻海色が濃くなるのは明確だ。

 ただ、7月以降に再編する事業セグメントのトップには、2人の日本人の共同CEO(最高経営責任者)が就く。「スマートビジネス」に野村勝明副社長、「8Kエコシステム」に戴会長、「ICT」に石田佳久副社長が、それぞれ事業トップに就く予定だ。

利益率の向上に軸足


 セグメント再編はハードウエアとソフトウエアを融合したソリューション展開を強化し、売り上げ規模の拡大よりも、利益率の向上に重点を置く狙いだ。しかし、液晶テレビなど各製品の販売状況が対外的に分かりにくい側面も否めない。

 鴻海の製造拠点や販売網を活用した戦略は従来通り続ける。だが財務状況を改善した上で、鴻海から独立した経営がどこまで進むのかは不透明だ。
(取材・園尾雅之)

日刊工業新聞2019年6月12日(エレクトロニクス)

  

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