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ANAとJALが来春から変動料金制導入、旅行会社向けに

航空大手2社が2020年春をめどに、旅行会社向け割り引き航空券を、予測残席数に応じたダイナミックプライシング(変動料金制)に移行する方針を固めた。旅行各社はこれを受けて、商品造成や販売手法の刷新に迫られている。募集型企画旅行などが“時価”となり、価格入りパンフレットを作成しづらくなる。従来の店舗やパンフレットを通じて旅行商品を販売する、旅行会社のビジネスモデルは大きな転機を迎えている。

 変動料金制に移行する航空券は、旅行会社の旅行商品や団体旅行向けに販売する包括運賃(IT運賃)と呼ばれる割引運賃。正式決定前ではあるが、全日本空輸(ANA)と日本航空(JAL)の両社はそれぞれ旅行会社に方針を伝えた。

 従来のIT運賃は航空会社が季節や曜日などの需要予測を元に数カ月先の価格を提示。旅行会社は自らの商品に組み入れて、ツアーの価格を決めていた。航空2社は個人向け航空券で予測残席数に連動した運賃を拡大しており、収入(レベニュー)最大化を狙い、IT運賃も対象とする。

 変動料金制が普及すると、ウェブ経由で航空券と宿泊、着地型観光を自由に選んで組み立てる商品「ダイナミックパッケージ」が主流になると見られる。だが、旅行大手各社は対応に出遅れている。

 航空2社の方針を受けて、JTBは「ダイナミック化を進める」(高橋広行社長)として18年度に開発中だった仕入れ・販売の基幹システム刷新を中止。航空券だけでなく、ホテルや鉄道などへの変動料金制拡大に備え、リアルタイムの仕入れ機能を持った新システムの開発に着手した。

 日本旅行は「大規模な(システム)投資をして、店舗が(変動料金制に)対応するようにしていかなければならない」(堀坂明弘社長)と投入を準備。KNT―CTホールディングス(HD)も「ITシステムの抜本的改革に取り組み、早期にダイナミックパッケージに参入する」(丸山隆司社長)としている。
日刊工業新聞2019年5月29日

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