欧エアバスが描く、野心的な「次世代旅客機」構想の全貌

50年までに二酸化炭素75%削減

 欧エアバスは次世代旅客機の研究・開発を加速する。環境に配慮してエンジンを電動化する次世代旅客機や、生物の姿に学んで燃費向上を図る旅客機などを構想。長期的ビジョンとして、2050年までに二酸化炭素(CO2)排出量を現行比で75%減、窒素酸化物(NOx)は同70%減、騒音は同65%減を達成する目標を掲げる。人工知能(AI)を利用した、パイロットの負担軽減などの研究も進める考えだ。(文=編集委員・嶋田歩)

 「実現するには非常にハードルが高い、野心的な目標だ。しかし、だからこそ、挑戦のしがいがある」。エアバスのエンジニアリング部門担当のジャン―グライス・デュモン上席副社長は、次世代旅客機のビジョンについてこう強調する。

 同じCO2削減やNOx削減を進めるのでも、旅客機と他のモビリティーでは難易度のレベルが違う。旅客機は重量やエネルギー消費量が多く、飛行安全上の技術的な制約もある。

 環境に優しい次世代旅客機の要素技術では、機体の軽量化や新素材、力学特性の研究、エンジンの燃費向上や出力増などが思い浮かぶが、既存技術の延長では解決できない壁も多い。

 エアバスが構想する次世代旅客機「E―FanX」は21年に実験機を飛行する計画で、独シーメンスと共同研究を進めている。

 客席数は約100席を予定し、4基のエンジンを搭載。4基のうち、1基分を電動化する考えで、その分のCO2やNOx、騒音などを削減する。将来的には4基エンジンすべての動力を、電動化する計画だ。

 エンジンの電動化はもちろん、既存エンジンでも高効率燃焼や出力向上のための技術が必要になる。機体材料はカーボンや炭素繊維強化プラスチック(CFRP)に加え、環境に優しいバイオマテリアルを研究する考えだ。当然、強度や耐熱性、コストなどと両立する研究が要求される。

 一方、アホウドリの羽の特性を模倣して環境負荷を減らす研究も進めている。主翼端部分をブラブラと風で動かすことで機体への影響を減らすとともに主翼も薄くでき、軽量化と燃費向上が図れる。

 パイロットの負担軽減も、大きな要素になる。世界での旅客機需要は急拡大しており、機体増産とともに、パイロットの養成や確保もネックだ。空港近辺で管制官からの指示や交信のやりとりをAIである程度、判断させ、パイロットの負担を軽減する。

 エアバスは現在、4人乗りの“空飛ぶタクシー”も開発済みで、さまざまの実験も進めている。こちらの技術も、負担軽減に応用する考えだ。

 「次世代通信の第5世代通信(5G)で、現状より高速・大容量通信ができるようになり、通信量やデータ量が増える。これ以外でもさまざまな技術革新が進んでいる。未来の航空機の姿は現在とかなり変わっているだろう」。デュモン上席副社長はこう期待する。

仏ドゴール空港でのエアバス機体

日刊工業新聞2019年5月28日

  

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