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電池長寿命化へ、充電するたびに自己修復する電極材

東大が発見
 東京大学大学院工学系研究科の山田淳夫教授らは、充電するたびに自己修復を繰り返し、電池性能の劣化を防ぐ電極材料を発見した。X線の照射実験で明らかにした。材料からイオンが抜け生じた「空孔」とイオンとの間に生じる引力が自己修復の原因となることも突き止めた。電池の長寿命化への貢献が期待される。

 従来の電極材料では充電の際にイオンが脱離し、材料内の構造が乱れ電池の性能が落ちることが知られている。材料の性能劣化は電池の寿命を短くする原因となっていた。

 電極材料「ルテニウム酸ナトリウム(Na2RuO3)」をX線回折する実験を実施した。充電する前の状態で積層構造に大きな乱れを確認した。充電することで積層の乱れが自発的に消えることも分かった。さらに充電と放電を繰り返した後でも自発的な自己修復が起きることを明らかにした。

 また、電池材料の充電過程の構造変化を放射光X線回折実験で調べた。正電荷を持つナトリウムイオンが材料から脱離すると、その後に負電荷を持つ空孔ができる。空孔と材料の構造中に残っているナトリウムイオンとの間に強い電気的な引力が生じ、乱れがない構造に修復することが分かった。

 成果は16日、英科学誌ネイチャー・コミュニケーションズ電子版に掲載された。
                     
日刊工業新聞2019年5月17日

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