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G20開催まで残り2カ月、大阪の準備は万端?

地域の魅力発信のチャンス、万博も意識
G20開催まで残り2カ月、大阪の準備は万端?

「G20大阪サミット」の会場となるインテックス大阪

 6月28、29の両日に日本で初開催となる、主要20カ国・地域(G20)首脳会議(サミット)まで2カ月を切った。会場の国際展示場「インテックス大阪」(大阪市住之江区)は大阪の中心部に近いため、警備・交通規制の強化による影響など地元では懸念の声があがる。一方、世界から37の国や機関の首脳が大阪に集まる貴重な機会に、地域が大きく活気づくとの期待感も高い。(文=大阪・大川藍、同・新庄悠)

交通規制に対応 安全確保へ官民が協力


 「数日間物流が滞ると大打撃だ」と、大阪府高石市で金属容器製造を手がける経営者は漏らす。関西系物流大手のセンコーグループホールディングスは「納期の調整や配送ルートの変更などで対応する」とし、納品先への影響を最小限に抑える方針だ。

 G20大阪サミット開催に合わせ6月27―30日の4日間、大阪市内などでは大規模な交通規制が実施される。阪神高速道路の主要区間はほぼ閉鎖が決定。G20大阪サミット交通総量抑制連絡会は、交通の総量を通常時の50%に削減する目標を掲げる。

 大阪サミット会場となるのは人工島の咲洲(さきしま)。日立造船は咲洲本社で約1600人が働くが、27日と開催初日の28日を有給休暇の一斉取得日にした。ミズノも咲洲の大阪本社を両日休館する。

 6月末は株主総会の集中日でもある。関西電力は18年にATCホール(大阪市住之江区)で開いた株主総会を大阪国際交流センター(大阪市天王寺区)に変更。他の関西企業でも、総会の会場や日程の変更が散見される。

 関西の空港や鉄道各社の大阪サミット準備は待ったなしだ。関西国際空港を運営する関西エアポート(大阪府泉佐野市)は「飛行機の着陸場所や出迎える人の配置、警備などの施設をどう使うか協議中」(西尾裕専務)と綿密に対応を練る。

 咲洲へつながる地下鉄・ニュートラムを運営する大阪市高速電気軌道(大阪メトロ)は、新大阪や梅田駅などの主要駅に29台のセキュリティーカメラを増設。河井英明社長は「より安全な形にしていく」と強調する。近畿日本鉄道では、大阪上本町駅(大阪市天王寺区)で大阪サミットを見据えたテロ対策訓練を4月に実施した。

 海外VIPの宿泊が予想される関西の有力ホテルも対応に追われる。リーガロイヤルホテル(大阪市北区)はプロジェクトチームを設置し、1階ロビーの改装や客室の無線環境更新といったハード面と、社員の語学研修などソフト面の対策を進める。JR大阪駅に直結するホテルグランヴィア大阪(大阪市北区)でも、警備としてホテルスタッフの見回りを増やす方針だ。
          

財界、議論に関心 自由貿易のリーダー役に


 大阪サミットでは、米国に代表される保護主義の台頭や、プラットフォーマーと呼ばれる大手IT企業への「デジタル課税」など、経済問題が中心議題になるとみられる。開催地の関西経済界も議論の行方に強い関心を示す。

 大阪商工会議所の尾崎裕会頭(大阪ガス会長)は「各国が協力して世界経済を運営する機運をどうつくるか」と、自由貿易を掲げる日本のリーダーシップ発揮に期待する。関西みらいフィナンシャルグループの菅哲哉社長も「関西はアジアとのビジネス比率が高い」とし、「日本は政治の安定を生かし(世界経済安定に向けた)議論主導を」と要望する。

 米中貿易摩擦への対応を注視する関西の中小企業もある。自動車向けプレス金型の加工を手がける明星金属工業(大阪府大東市)の上田幸司社長は「自国第一主義による米国と他国との関税協議がどう進展するか」と関心を寄せる。

 大手IT企業へのデジタル課税について、関西経済連合会の松本正義会長(住友電気工業会長)は「Eコマースでふくれあがった巨大企業が、どのような税制の下に市民に還元すべきか、よく議論を」と要望。NTT西日本の村尾和俊相談役は「公正な税制に向けた道筋を打ち立ててほしい」と強調する。

 規制と同時に自由なデータ流通についての議論にも注目が集まりそうだ。関西の大手電機メーカーからは「バランスのとれたルールが多くの国との間で合意されることを期待する」との声が上がる。

 ほかにも塩野義製薬の手代木功社長は「(支払い可能な費用ですべての人が適切な医療を受けられる)ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)は日本がG20参加国の中でも相当リードしている」と述べ、保健分野での議論主導を期待する。神戸製鋼所の佐藤広士顧問は、気候変動問題に関し「世界の脱炭素化に向けた動きが活発となる」とし、環境と経済発展のバランスのとれた議論を要望する。

万博につなげる


 議論の行方を含め、さまざまな期待と不安が入り交じるG20大阪サミット。交通規制など制約を受けるのは事実だが、世界のVIPに大阪・関西の食や文化、モノづくりやライフサイエンスなど、地域の強みや魅力を発信できる絶好の機会でもある。

 サミットで得たグローバル規模の経験を、2025年に開かれる「大阪・関西万博」につなげることも重要となる

“戦支度”に首相が先陣


大阪迎賓館の視察に向かう安倍首相(手前左=大阪城公園西の丸庭園)

 4月20日、大阪城公園西の丸庭園に安倍晋三首相が現れた。G20大阪サミットをPRすべく、関連行事が予定される大阪迎賓館を視察。その後、大阪市内のなんばグランド花月で上演されている「吉本新喜劇」の舞台にも立ち、大阪サミットの交通規制に対する協力などを呼びかけた。

私はこう見る


 G20大阪サミットの開催地への影響をどう見ているか。大阪の観光行政を率いる大阪観光局の溝畑宏理事長と、関西経済を分析するりそな総合研究所の荒木秀之首席研究員に聞いた。

ノウハウ蓄積、絶好の機会 大阪観光局理事長・溝畑宏氏
 大阪サミットの受け入れは、中長期的にメリットが大きい。世界各国の首脳を迎えて、ハイレベルな会議が開かれた実績を残すことは、大阪の国際都市としての信用力や知名度の向上につながる。

 これから大阪が目指す観光の方向性は「量から質」への転換だ。富裕層をはじめとする訪日外国人(インバウンド)に、活発な消費活動を行ってもらう必要がある。今回の大阪サミットで相当数の海外VIPなどを受け入れることは、今後の富裕層対応へのノウハウを蓄積する絶好の機会となる。

 ホテルなどのホスピタリティーに加え、交通インフラで空港からホテル、施設に至る適切な動線を確保することは貴重な経験になる。一方で6月27―30日の4日間、街は交通規制や警備が相当厳しくなる。このデメリットをどう最小限に抑えるかは重要だ。(談)
溝畑宏氏

中長期では経済にプラス りそな総合研究所主席研究員・荒木秀之氏
 G20大阪サミット期間中は関係者約3万人が大阪に滞在する。運営費に250億円、消費に50億円の新規需要が生まれ、期間中の経済波及効果は関西300億円、国内全体は500億円と試算した。

 ただ、今回の開催だけで莫大(ばくだい)な効果が出るとは言いがたい。会場のインテックス大阪は都市部に近く、期間中の交通規制による企業活動への影響の大きさが不透明だからだ。インバウンドを受け入れる宿泊施設の一時的な減少など、観光産業に与える影響も加味する必要がある。

 一方、中長期的にみれば大阪サミットの開催は地元経済にとって大きなプラスになる。1万人規模のMICE(会合・報奨旅行・国際会議・イベント)1件につき40億円の経済効果が生まれるとの試算もあり、MICE誘致に向けた国際的な知名度向上の意義は大きい。(談)
荒木秀之氏
日刊工業新聞2019年5月3日

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