“学生が一緒に働きたい社長”No.1が決定!

社長と学生の距離が近づくとどんなメリットがある?

社長と学生“つなぐ”


 中小企業の人材確保や認知度向上に向けた新たな取り組みが始まった。ESSPRIDE(エスプライド、東京都渋谷区、西川世一最高経営責任者〈CEO〉、03・3479・3610)は、社長と学生との出会いを創出する中小企業向け事業を本格的に始めた。4月に学生が一緒に働きたいと思う社長を学生自身が選ぶ大会を開いた。5月に社長と学生をつなぐカリキュラムやサークル活動を始める。中小企業の人材採用や新事業創出などを後押しする。

助け合う


 「社長と学生が友達のような関係で集まり互いに助け合う。そんな新しい時代の一歩を作りたい」。中小企業ナンバーワンの社長を学生が選ぶ「チャーミング・チェアマンズ・クラブ・チャンピオンシップ2019」の開催あいさつで西川CEOは来場者を前にこう宣言した。

 学生有利の売り手市場で採用が困難な中小企業は多い。一方で、多くの困難を乗り越えてきた社長の高いスキルや人柄などを重視して就職活動する学生も増えつつある。そこで事業や働く意義などを社長自身が情熱を持って語る機会を設けることで社長と学生の間を取り持ち、人材採用や学生のアイデアによる新事業創出や既存事業の活性化につなげていきたい考えだ。

 初開催の大会は同社の社長を対象とした経営プラットフォーム「社長チップス」が主催した。社長チップスは同社が企画した全国で活躍する社長のカード付きポテトチップスで、同商品をブランド名称として企業PR、人材採用、ブランディングなどを支援する。今回、アトミックスメディア(東京都港区)が手がける経済誌「フォーブスジャパン」と組んで開いた。
大会開催のあいさつをするエスプライドの西川CEO

5人が熱弁


 選抜した学生審査委員会が1次、2次審査を通じて応募の中から100人のノミネート社長を選出。この中から学生約300人を前に、事業や経営に対する思いを伝えるプレゼンテーションを行うファイナリスト社長5人を選び出した。大会当日はノミネート社長を含む約500人の来場者に向け、5人の社長がそれぞれ熱弁を振るった。

 アヤベ洋菓子(埼玉県川口市)は百貨店や大手コーヒーチェーンなど向けにOEM(相手先ブランド)供給する焼き菓子専門メーカー。2代目の綾部哲嗣社長は大学まで野球一筋だったが、就職後に両親から経営の窮状を聞き、家業を継ぐことを決断。社員1人とパート8人の規模から同80人以上の企業に成長させた。綾部社長は「新たな挑戦として自社ブランドを立ち上げる。日本を代表する洋菓子を作りたい」と夢を語った。

 アルム(岡山県赤磐市)は養鶏業を営む。日本農林規格(JAS)の「有機JAS」認定を受けたオーガニック農場を運営する。同農場は同社を含め国内に4社しかない。ニワトリにストレス与えない平地飼い鶏舎で、外壁に絵を描いた「アート鶏舎」が特徴だ。荒嶋望社長は「将来は海外に農場を持ってみたい。日本初のニワトリのアミューズメントパークもやりたい」と述べた。同時に「農業を印象派の絵のように明るいものにしていきたい」と意欲を示した。

 エン婚活エージェント(東京都新宿区)はオンライン結婚相談所を手がける。間宮亮太社長は「事業を通じて結婚後の幸せにつながる男女のマッチングサービスを圧倒的な低価格で提供している」と事業に自信を示す。誰でも簡単に安心して始められる婚活手段として業界にイノベーションを起こしたいと強調する。結婚後の幸福が続くために家族を取り巻く課題を人工知能(AI)などを使って解決する手段の事業化を目指している。

 サラダボウル(山梨県中央市)は農産物の生産・販売、加工、小売り、農作業の請け負いや農業経営コンサルティングなどを行っている。トマトを各地で生産し、全国のスーパーに販売。田中進社長は「農家の家に育ったが子どものころは恥ずかしかった」と振り返る。だが、農業の社会的価値や可能性に気づき起業。今では700人を雇用する農業法人となり、社員は週休2日制で賞与も支給される。「仲間と一緒に農業の新しい形を作りたい」としている。

 八光殿(大阪府八尾市)は創業70年以上の老舗企業で葬祭サービスを手がける。同社は社員の信条をまとめた「クレド」を通じて遺族に寄り添い、「ありがとう」と言ってもらえるような究極のサービスを心がける。従業員満足(ES)の向上にも努める。松村康隆社長は「まず社員の幸せを考え、そして顧客満足度(CS)を追求する」と話す。また、東日本大震災で亡くなった人を納棺した経験も披露し「いま生かされていることに感謝しよう」と呼びかけた。
ファイナリスト社長によるプレゼンテーション

取り組み加速


 学生300人による投票の結果、初代チャンピオンにサラダボウルの田中社長が選ばれた。賞品の一つとして高級家具メーカーの天童木工(山形県天童市)が製作した特製のいすが贈られた。田中社長は「学生の皆さまから選んでいただいた重みを感じる。よりよい会社が作れるように仲間と一緒に思い切り楽しんで仕事をしていきたい」と語った。

 学生審査委員を代表して慶応義塾大学2年の田代葵さんは「審査を通じ社長のプロフィルを見て、失敗や困難を乗り越えてきた同じ人間だと親近感が湧いた。自分がどのタイプのリーダーになりたいかを考える機会にもなった」と述べた。

 社長と学生の接点を作る大会について参加社長の評価は高かった。田中サラダボウル社長は「農業に大きな可能性があることをいろんな場面で伝えたかった。『こういう会社にしたい』ということを伝えられて素直にうれしかった」と感想を述べた。間宮エン婚活エージェント社長は「(大会終了後)学生から『いろいろ教えて下さい』と話しかけられた。心に残るようなメッセージを伝えられたと思う」と手応えを感じていた。
初代チャンピオンとなった田中サラダボウル社長

新たな採用形態


 中小企業の社長が本音で仕事や人生観を語ることが将来を考える学生の心を打ったようだ。これを受け、エスプライドは大会を継続する。同時に社長と学生をつなぐ取り組みも加速する。今後、社長チップス名義で新たな取り組みを実施していく。5月中に社長と学生が共に学びあえるカリキュラムや友達になれるようなサークル活動を提供する「社長チップス学院」を開校する予定だ。

 同学院では実際に学生が社長と会って話を聞く機会も設ける。実家が家業を営む学生が社長に事業承継の助言をもらえる可能性もある。社長と学生が共同で商品企画や会社のブランディングなどを行うカリキュラムも用意する。また、学生の中から「社長チップス学生アンバサダー」を選出。インターンシップ(就業体験)などを体験できる。活動を通じ企業からスカウトされる可能性もある。社長と学生をつなぐ試みは新たな採用の形態として注目を集めそうだ。
(文=編集委員・渡部敦)
          

日刊工業新聞2019年5月2日

  

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