乱立するインターンシップ、中小企業は“雇い負け"を回避せよ
実施企業数の増加で見えてきた課題
内閣府が10月に発表した「学生の就職・採用活動開始時期等に関する調査(平成30年度)」によると、インターンシップに1回以上参加した大学4年生および大学院2年生(18年度卒)の数は7割を超え、参加率は年々上昇している。インターンシップを実施する企業数も増えている中で、大手企業ほど十分な人手や時間を割けない中小企業がインターンシップを成功させるためには何が必要なのか。
就職活動情報サイトの中でも登録学生数が最も多いマイナビによると、企業に対して個別のフィードバックの実施を望む学生が多いという。同社が主催する「学生が選ぶインターンシップアワード」の選考では、“学生一人一人にフィードバックをしてくれる”“実務体験ができる”“多くの社員に出会える”プログラムは学生から高評価だった。一方で、説明会や疑似体験のみで終わってしまうプログラムは低評価。同社の栗田卓也リサーチ&マーケティング部長は「自分にとって得られるものが大きいか否か、という点がプログラムの良しあしを判断する評価軸になっている」と、学生の視点を分析する。
しかし、企業にとってフィードバックは簡単にできるものではない。参加者が多いプログラムほど、対応する社員の準備やスケジュール調整は難しくなる。フィードバックのノウハウを持っていないという不安も、実施を踏みとどまる一因だ。
この点に注目したのが、企業情報の掲載数で最多を誇る就職活動情報サイト「リクナビ」を運営するリクルートキャリア。インターンシップで個別のフィードバックを実施する企業を集めた「社会のトビラプロジェクト」を、2018年9月に開始。同プロジェクトで企業のフィードバック実施を支援している。
支援の一つが、参加企業に提供するフィードバック専用の記入シート。記入シートにはインターンシップに参加した感想や気付き、改善点などを書き込む欄が設けられている。参加学生と社員が回答項目に沿って一緒にインターンシップを振り返ることができるため、ノウハウのない社員でも手軽に取り組める。
さらに、同プロジェクトに参加する企業は、「リクナビ」内で学生の目に留まりやすい場所に企業情報を掲載することができる。同社によると、参画企業の多くは中小企業。同プロジェクトを担当するメディアサービス事業本部の大野千香氏は、「中小企業は大手企業と比べて事前に想定しているインターンシップの参加者数が少なく、個別のフィードバックを実施しやすい」としている。
中小企業がフィードバックを実施しやすいとはいえ、そもそもインターンシップの企画や運営に割ける時間や労力が足りないという課題がある。
中小企業では採用担当者が他の仕事を兼務していたり、インターンシップの担当者が一人だったりするケースも珍しくない。このため、企業の採用活動・人材育成に関連したイベントの企画を担うカケハシ スカイソリューションズの中西啓ヒューマンリレーション事業部マネージャーは、「まず担当者が学生のフォローや社内の調整のためにどれだけ動くことができるか考える必要がある」と指摘する。
また、企業規模に関わらない問題として、現場に学生を受け入れることが難しい業種・職種への対応が挙げられる。
これに対して、中西マネージャーは「職種・業種によっては仕事を“デフォルメ”することで魅力が伝わりやすくなる」と語る。代表的な例として、ゲームやワークショップの形式で仕事の仕組みを紹介する方法がある。
それでも、同社に寄せられる相談には「『インターンシップは実務体験でなければならない』と考えているケースが多い」(中西マネージャー)という。「企業が学生に何を伝えたいか、そのために実務のどの部分を切り取るかが重要だ。状況に応じて最適な方法を柔軟に受け入れられる担当者の存在が、インターンシップ成功のカギを握っている」(同)。
そもそも、なぜ企業はこぞってインターンシップを開催するのだろうか。
一因として、企業が新卒採用の情報を発信できる期間が短期化していることが挙げられる。19年3月に卒業する学生を対象とした就職活動について、日本経済団体連合会(経団連)は加盟企業に対して3月から広報を開始、6月から選考を開始するように呼びかけてきた。広報活動の期間は3カ月。16年3月卒業の学生を対象とした前回の指針と比べると、2カ月も短くなっている。
リクルートキャリアの調査部門である就職みらい研究所の増本全主任研究員は、「広報活動期間の短期化に採用難も加わって、スカウティングメールなどで学生との接点をなんとか増やそうとしている企業が多い」と語る。「結果として、企業の間で学生に直接会うニーズが高まった。最近では特にイベントへの参加に力を入れる企業が増えている」(同)。その中で、学生に接触できる機会の一つとして、インターンシップも重視されるようになったと考えられる。
広報期間の短縮で、学生の動きにも変化が現れた。栗田部長は、「これまでは大半の学生が広報活動期間にキャリアイメージを描いていた。その期間が短くなったことで、本格的な就職活動が始まる前のインターンシップを利用する学生が増えた」と語る。
さらに、多くの学生が周りから取り残されることに不安を抱き、その結果インターンシップへの注目が高まったとする見方もある。インターンシップの参加者の増加に対して、増本主任研究員は「もはや強迫観念に近いものに動かされている」と話す。「もともと意欲的な学生が参加するイベントだった。今は明確な目的を持たず『周りがやっているから』『就職活動に役立つから』と、漠然とした理由で参加する学生が圧倒的に多い」(同)。
就活情報サイトは“フィードバック”を重視
就職活動情報サイトの中でも登録学生数が最も多いマイナビによると、企業に対して個別のフィードバックの実施を望む学生が多いという。同社が主催する「学生が選ぶインターンシップアワード」の選考では、“学生一人一人にフィードバックをしてくれる”“実務体験ができる”“多くの社員に出会える”プログラムは学生から高評価だった。一方で、説明会や疑似体験のみで終わってしまうプログラムは低評価。同社の栗田卓也リサーチ&マーケティング部長は「自分にとって得られるものが大きいか否か、という点がプログラムの良しあしを判断する評価軸になっている」と、学生の視点を分析する。
しかし、企業にとってフィードバックは簡単にできるものではない。参加者が多いプログラムほど、対応する社員の準備やスケジュール調整は難しくなる。フィードバックのノウハウを持っていないという不安も、実施を踏みとどまる一因だ。
この点に注目したのが、企業情報の掲載数で最多を誇る就職活動情報サイト「リクナビ」を運営するリクルートキャリア。インターンシップで個別のフィードバックを実施する企業を集めた「社会のトビラプロジェクト」を、2018年9月に開始。同プロジェクトで企業のフィードバック実施を支援している。
支援の一つが、参加企業に提供するフィードバック専用の記入シート。記入シートにはインターンシップに参加した感想や気付き、改善点などを書き込む欄が設けられている。参加学生と社員が回答項目に沿って一緒にインターンシップを振り返ることができるため、ノウハウのない社員でも手軽に取り組める。
さらに、同プロジェクトに参加する企業は、「リクナビ」内で学生の目に留まりやすい場所に企業情報を掲載することができる。同社によると、参画企業の多くは中小企業。同プロジェクトを担当するメディアサービス事業本部の大野千香氏は、「中小企業は大手企業と比べて事前に想定しているインターンシップの参加者数が少なく、個別のフィードバックを実施しやすい」としている。
企業の課題は?
中小企業がフィードバックを実施しやすいとはいえ、そもそもインターンシップの企画や運営に割ける時間や労力が足りないという課題がある。
中小企業では採用担当者が他の仕事を兼務していたり、インターンシップの担当者が一人だったりするケースも珍しくない。このため、企業の採用活動・人材育成に関連したイベントの企画を担うカケハシ スカイソリューションズの中西啓ヒューマンリレーション事業部マネージャーは、「まず担当者が学生のフォローや社内の調整のためにどれだけ動くことができるか考える必要がある」と指摘する。
また、企業規模に関わらない問題として、現場に学生を受け入れることが難しい業種・職種への対応が挙げられる。
これに対して、中西マネージャーは「職種・業種によっては仕事を“デフォルメ”することで魅力が伝わりやすくなる」と語る。代表的な例として、ゲームやワークショップの形式で仕事の仕組みを紹介する方法がある。
それでも、同社に寄せられる相談には「『インターンシップは実務体験でなければならない』と考えているケースが多い」(中西マネージャー)という。「企業が学生に何を伝えたいか、そのために実務のどの部分を切り取るかが重要だ。状況に応じて最適な方法を柔軟に受け入れられる担当者の存在が、インターンシップ成功のカギを握っている」(同)。
インターンシップへの興味はなぜ尽きないのか
そもそも、なぜ企業はこぞってインターンシップを開催するのだろうか。
一因として、企業が新卒採用の情報を発信できる期間が短期化していることが挙げられる。19年3月に卒業する学生を対象とした就職活動について、日本経済団体連合会(経団連)は加盟企業に対して3月から広報を開始、6月から選考を開始するように呼びかけてきた。広報活動の期間は3カ月。16年3月卒業の学生を対象とした前回の指針と比べると、2カ月も短くなっている。
リクルートキャリアの調査部門である就職みらい研究所の増本全主任研究員は、「広報活動期間の短期化に採用難も加わって、スカウティングメールなどで学生との接点をなんとか増やそうとしている企業が多い」と語る。「結果として、企業の間で学生に直接会うニーズが高まった。最近では特にイベントへの参加に力を入れる企業が増えている」(同)。その中で、学生に接触できる機会の一つとして、インターンシップも重視されるようになったと考えられる。
広報期間の短縮で、学生の動きにも変化が現れた。栗田部長は、「これまでは大半の学生が広報活動期間にキャリアイメージを描いていた。その期間が短くなったことで、本格的な就職活動が始まる前のインターンシップを利用する学生が増えた」と語る。
さらに、多くの学生が周りから取り残されることに不安を抱き、その結果インターンシップへの注目が高まったとする見方もある。インターンシップの参加者の増加に対して、増本主任研究員は「もはや強迫観念に近いものに動かされている」と話す。「もともと意欲的な学生が参加するイベントだった。今は明確な目的を持たず『周りがやっているから』『就職活動に役立つから』と、漠然とした理由で参加する学生が圧倒的に多い」(同)。
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