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年間100社利用、ゴムの3Dプリンターの可能性

年間100社利用、ゴムの3Dプリンターの可能性

世界初の加硫ゴム3Dプリンター

 兵庫県立工業技術センターは、2003年頃から鋳造技術への応用を目的に3Dプリンターに関する研究を進めてきた。現在は樹脂、金属、砂型、ゴムの4種の3Dプリンターを有し、利用企業は年間100社にのぼる。4月に新設の金属新素材研究センター(兵庫県姫路市)ではレーザービームと切削のハイブリッド式、電子ビーム式の金属用プリンターを導入し、医療分野の開発に力を入れる。内田仁所長に聞いた。

―ゴムの3Dプリンターとは珍しいですね。

「加硫ゴム3Dプリンターは当センターが世界で初めて開発した。ゴム製の靴底の開発などに寄与する。3Dプリンターによって樹脂で靴底をつくる例は既にあるが、樹脂は弾性が低い。弾性の高いゴムで製品をつくりたいというニーズに応えた」

―3Dプリンターの可能性をどう考えていますか。

「熟練工でなくても、3DCADやコンピューター利用解析(CAE)の知識さえあれば、誰でもモノづくりができるようになった点で非常に意義がある。女性の活躍も目立つ」

―評判になった中小の導入事例は。

「鋳造用木型の製造を手がける相互製作所(兵庫県姫路市)では、鋳造製品の表面に文字や数字を浮かび上がらせる『鋳出し文字』と呼ばれる交換部品を製造している。この鋳出し文字を、樹脂プリンターを導入し手早く簡単につくれるようになった。画期的だと評価され、姫路市の奨励事業に選ばれた」

―今後の展開は。

「3Dプリンターの活用には人材育成が不可欠だ。装置を導入しても、3Dの知識を持つ人がいなければ、モノはつくれない。当センターが行っているセミナーや技術相談を通じ、人材の必要性や業種に合った活用の仕方を訴えていく」

「金属新素材研究センターでは、電子ビーム式の3Dプリンターで複雑な形状の部品がつくれるようになる。今後は医療分野の研究開発にも力を入れたい」
(聞き手=大阪・大川藍)
日刊工業新聞2019年4月4日

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