三菱重工で初の生え抜き女性役員、会社を辞めなかった理由

荻野シニアフェローに聞く「上司が『何があっても続けろ」

 三菱重工業で初めての生え抜き女性役員に荻野貴美子氏が就任した。同社名古屋航空宇宙システム製作所の技術者として多くの航空・宇宙機種開発に携わり、最近では国産ジェット旅客機「MRJ」の機体構造関連の試験に関わってきた。“男社会”のイメージが強い重工系企業で活躍を続け、1日付でシニアフェロー総合研究所MRJ構造担当HR女性キャリア(技術系)開発担当に就任した荻野氏に話を聞いた。

 ―役員就任に当たり抱負を。
 「技術部門の女性社員が増えているとはいえ、その数は少ない。女性技術者の活躍の場をつくりたい。これから社会人になる学生にも当社の魅力を知ってもらい、女性技術者の裾野を広げたい」

 ―女性管理職を増やすには。
 「結婚や出産、育児、配偶者の転勤など、女性ならではのイベントがあり、そのハードルをどのように越えてもらうかがポイント。企業としての働き方改革は重要だ。当社にはトップクラスの制度が整っている。ただ、職場の理解がないと使いこなせない。使いやすくする工夫が大切だ」

 ―自らキャリアアップの道を閉ざしてしまうアンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)も女性管理職登用の妨げになります。
 「管理職ならではの面白みや醍醐味(だいごみ)、やりがいがある。これからキャリアを積んでいく女性には、考える前にやってみると楽しいことを伝えたい。世の中のニーズは多様化している。女性目線での発想を取り込むことは会社にプラスの効果を生む」

 ―会社を辞めようと思ったことは。
 「ないとは言えない。だが、結婚と同時期に異動があり、当時の上司が『何があっても続けろ。絶対辞めるな』と根気強く言い続けてくれた。周囲の理解もあり、それが転機になった。私が家にいる価値と仕事をする価値を比べて考えたこともあるが、両親が協力してくれた。夫からも辞めてほしいと言われたことはない」

 ―これから管理職、役員を目指す女性にアドバイスを。
 「役員になる目標も選択肢の一つ。与えられたチャンスを逃さないようにしてほしい。そして周囲の支援を得られるよう努力することが大切だ」

 ―気分転換は。
 「一日の終わりに録画しておいたNHKの朝の連続ドラマを見るのが楽しみ」

【記者の目】
 大の航空機好きだった高校時代の数学教師から名古屋航空宇宙システム製作所の話をよく聞いていたことが入社のきっかけという。三菱重工の理系女性採用比率は近年15%前後と高く、女性管理職も20年までに14年比3倍の250人を超える見込み。荻野氏はキャリアアップを志向する女性社員のロールモデルになる。
(鈴木真央)

日刊工業新聞2019年4月3日

  

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