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人気拡大中の「ホームWiFiルーター」、引越しシーズンがチャンスな理由

契約には注意も必要
人気拡大中の「ホームWiFiルーター」、引越しシーズンがチャンスな理由

UQコミュニケーションズのホームワイファイルーター(左)

 引っ越しシーズンが到来し、自宅に据え置いて固定回線として利用するホームWi―Fi(ワイファイ)ルーターが注目されている。インターネットの開通工事の予約が取りにくくなる中、工事不要な手軽さが好評なことが背景にある。光やケーブルテレビ(CATV)回線といった従来型より通信速度は劣るものの、単身世帯などを中心に需要が高まっている。

ニーズ満たす


 「光回線は開通までに2―3週間程度要することもある。すぐにネットを使いたいニーズを満たすため開発した」。2014年からホームワイファイルーターサービス「SoftBank Air(ソフトバンクエアー)」を提供するソフトバンクの谷口一成サービス推進統括部部長はこう説明する。同サービスは店頭などで専用端末を受け取り、自宅のコンセントにつなげばすぐにネットが使える。最初の2年間は月3800円(消費税抜き)で利用できる。

 同社は光回線の「ソフトバンク光」も提供している。両サービスで顧客を取り合う可能性について「ユーザーはサービス内容を理解した上で用途に応じて賢く使っている」と否定する。ソフトバンクエアーの通信速度は下り(受信)で最大毎秒350メガビットと、ソフトバンク光の3分の1程度。大容量動画をスマートフォンやパソコン、テレビなど複数の端末で視聴するユーザーはソフトバンク光を利用。会員制交流サイト(SNS)の閲覧などスマホを中心にネットを使うユーザーはソフトバンクエアーを選ぶ傾向があるという。

セット割


 「ホームワイファイルーター市場は成長率が高い。この市場を取り込みたい」と意気込むのは、UQコミュニケーションズ(東京都港区)の野坂章雄社長。同社は格安スマホサービス「UQモバイル」とホームワイファイルーターのセット割を始めた。家族3人のスマホ料金と自宅のネット回線を合わせ、初年度は月9020円(消費税抜き)。引っ越しシーズンに向けて「電源さえあれば即ネットにつながる」(同)点もアピールする構えだ。

 MM総研(東京都港区)によると、光回線やCATVなどの固定ブロードバンドの中で、ソフトバンクエアーといったワイヤレスの占める比率は、22年度末に17年度比9・7ポイント増の17・5%(841万件)に拡大する見込み。光回線やCATVなどを代替するサービスとして普及が今後も進む。

 ただ、契約においては注意が必要だ。例えばソフトバンクエアーのサービス契約は2年間が原則。一方、自宅に据え置く専用端末は5万8320円(消費税込み)だが、36カ月(3年間)の分割払いを前提に実質0円で提供している。つまり利用者は4年間利用しないと解約金や端末の残債金を負担することになる。同端末は貸し出しにも対応するが、別途レンタル料が必要だ。

使い方吟味


 MM総研の横田英明常務は「端末との契約期間が別々だと消費者が解約しにくくなる」と指摘する。自宅内のネット環境をめぐって、光回線やCATVに次ぐ選択肢として浮上したホームワイファイルーター。手軽さだけではなく、ユーザーは自身のネットの使い方などを吟味した上で、慎重に選ぶことが求められる。
(文=大城蕗子)
日刊工業新聞2019年3月11日
葭本隆太
葭本隆太 Yoshimoto Ryuta デジタルメディア局DX編集部 ニュースイッチ編集長
UQコミュニケーションズはホームWiFiルーター事業にかなりの力の入れようです。この事業の動向は、市場自体が停滞気味の格安スマホ「UQモバイル」の動向のカギも握りそうです。

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