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移植後の拒絶反応のリスクが少ない「iPS細胞」誕生へ

京大で作製法が開発された
 京都大学iPS細胞研究所(CiRA)の徐淮耕大学院生と王博研究員、堀田秋津講師、金子新准教授らは、移植時の免疫による拒絶反応のリスクが少ないiPS細胞(人工多能性幹細胞=写真、京大提供)の作製法を開発した。デオキシリボ核酸(DNA)配列の精密な編集技術を使うことで実現できた。今回の作製法を使ったiPS細胞12種類で、日本人の95%および世界の約90%をカバーできる見込み。

 研究グループは、免疫から認識される「ヒト白血球型抗原(HLA)」で、特定の3種類の型が合わないと拒絶反応が起こる点に注目した。3種類のHLAが違う型同士のペアで構成された細胞からペアの片方を取り除き、3種類のHLA型を一つだけの状態にした。残ったHLA型と一致すれば、異物を排除する免疫細胞からの攻撃を受けにくい。

 さらに、3種類のうち不特定の細胞を攻撃する免疫細胞の働きを抑えるHLAだけ片方を残し、他の2種類はペアの両方を壊した。一つのHLA型が合えば移植可能なため、より少ない種類の細胞で多くの患者に対応できる。今後、より高品質のiPS細胞で安全性や有効性を詳細に検討し臨床応用を目指す。

 CiRAは同じHLA型のペアを持つ細胞由来のiPS細胞の貯蔵を進めているが、条件に合う細胞を持つ人が非常に少なく確保が難しい課題がある。

 研究成果は米科学誌「セル・ステム・セル」電子版に8日付で掲載される。
日刊工業新聞2019年3月8日

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