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トヨタ系サプライヤー、注目2社の社長は何を語ったか

**豊田合成・宮崎直樹社長に聞く
 ―2025年度に売上高を17年度比23・9%増の1兆円以上、営業利益率を同2・9ポイント増の8%にする中期計画を策定しました。

 「運転席やフロントグリル周辺の部品にセンサーやカメラを組み込み、モジュール化戦略をさらに進める。内外装技術や樹脂技術を生かす。『圧倒的なスピード感』を掲げて付加価値の高い新製品開発を加速し、3年以内の実績につなげたい」

 ―収益力強化策は。
 「既存ビジネスはどうしてもコモディティー化する。打ち勝つには付加価値向上と、生産現場だけでなく間接部門も含めた徹底的な生産性向上しかない。加えてモジュール化で付加価値を高めると同時に、独創的な技術で新たな価値を取る」

 ―電気の力で伸縮するゴム「eラバー」を今秋に製品化します。
 「まずは手術訓練用を見込むが、触覚センサーとしてロボットや医療向けに展開するなど応用の幅がとても広い。ビジネスモデルも含めて検討している。25年度に1000億円の売上高を目指す新規事業で、主要な部分を占めるだろう」

 ―ビジネスモデル転換の具体案は。
 「発光ダイオード(LED)やパワー半導体でも検討するが、知財の活用など単品売りでない案を考える」

 ―LED事業は構造改革を実施しました。
 「現状は収支トントンで推移している。樹脂との融合といった技術を進化させると、車載で活躍できる分野が増えるのではないか」
豊田合成社長・宮崎直樹氏

トヨタ紡織・沼毅社長に聞く


 ―自動運転で車内空間が重要になります。
 「例えばシートベルトがボディー側から出ているとシートを回転できないため、シート側に付ける必要がある。空調やエアバッグも同様だ。シェアリングでは清潔さなども大切だ。『クオリティー・オブ・タイム・アンド・スペース』を掲げ、素材からトータルの車室空間を手がけ競争力を高める。トヨタ自動車グループや外部との協業が必要になる」

 ―M&A(合併・買収)を強化しますか。
 「買収ではなく技術提携や協業で仲間作りをする。センサーやアルゴリズムなどが強いベンチャー企業への投資は強めたい」

 ―ニーズの多様化が予測されます。
 「営業所に技術系人材を置き、顧客の変化を素早く捉える。大阪や広島などで始め、インドでも同様の拠点の新設を計画している」

 ―11月に「ものづくり革新センター」が完成します。
 「設計、製品、品質部隊の集約で、リードタイム短縮や仕様の差別化がしやすくなる。世界的な標準化や、生産現場の地域ごとの成果の横展開をしたい」

 ―利益向上に向け体質強化も必須です。
 「より地域の特徴に合わせた骨格やシートカバーなどのグレードマネジメントを行い効率を高める。航空機やリチウムイオン二次電池など、新規事業投資も積極化する。具体的な方策を盛り込んだ『2025年ビジョン』を20年には出せるよう準備している」
トヨタ紡織社長・沼毅氏


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政年佐貴惠
政年佐貴惠 Masatoshi Sakie 名古屋支社編集部 記者
 豊田合成が重点市場に据える中国とインドでは、拠点の整備やエアバッグ関連の新工場稼働といった、既存ビジネスの強化体制も整えた。基盤整備をテコに宮崎直樹社長が訴える「2―3年先を見据えた拡販」を着実に実現し、既存事業を成長させていくことが、LEDやパワー半導体など新規領域への投資を継続する上での必須条件になる。  一方のトヨタ紡織。シェアリングや自動運転など車の新しい使い方が広がれば、シートメーカーの役割は大きくなる。競争力に直結する高い提案力に加え、新たなビジネスモデルを生み出す力もこれまで以上に必要になるだろう。「内装システムサプライヤーになる」と宣言する、沼毅社長のかじ取りがトヨタ紡織のこの先の成長を左右する。

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