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人材が足りない半導体企業、あの業界から奪い取りたい!

理系学生の人気は大手IT企業、若者の興味喚起に工夫
人材が足りない半導体企業、あの業界から奪い取りたい!

ディスコのプログラミングコンテスト

 人材不足に一石を投じようと、半導体関連企業が工夫を凝らしたアピールを展開している。ディスコはプログラミングコンテストの上位者に無期限の「面接パス券」を贈呈している。そのほかにも半導体の製造に使うレンズ・ウエハーの展示や子ども向けの理科教室などを通し、日常生活では目にする機会が少ない半導体に興味を持ってもらおうとする企業もある。半導体業界の人材不足は世界的な課題であり、各社の取り組みが熱を帯びている。

 半導体製造装置・材料の国際団体である米SEMI(カリフォルニア州)は「シリコンバレーだけでも、会員企業は何千人規模もの人材不足を抱えている。世界的な人材不足は1万人以上になるだろう」と警鐘を鳴らす。その背景として、米国などでは理系学生の人気が大手IT企業に集まる傾向があるという。

 国内企業は人材獲得や業界の認知度向上へつなげようと知恵を絞る。ディスコは、1月にディスカバリー・ジャパン(東京都千代田区)と共催したプログラミングコンテストで、新卒採用枠対象の上位者に「面接パス券」を進呈した。

 同パス券を使えばコンテストの7―20位の選手は2次面接から、1―6位の選手は役員面接から受けられる。有効期限は無期限だ。関家一馬社長兼最高経営責任者(CEO)は「プログラミングが得意な人の中で当社の知名度を上げていきたい」と狙いを明かす。

 同コンテストでは、社内の見学ツアーも実施した。優勝した東京大学大学院生の森田晃平さんは「就活中で悩んでいたが、社員が楽しく働けそうで興味を持った」と話す。東北大学大学院生の女性は「エンジニアがのびのび過ごせそうな会社だと思った」と驚く。

 現役の就活生以外に対しても企業の魅力を発信する場になっている。筑波大学付属駒場高校の男子生徒は「ITと直接関係がない会社でも、プログラミングが使われていると初めて知った」と目を輝かせる。

 将来は転職活動をするかもしれないという大手電機メーカー勤務のソフトエンジニアの20代男性は「社員の意思を尊重してくれる企業だと知った。自社に比べて福利厚生も充実している」とうらやましそうに話す。

 業界ではそのほか、ニコンが普段なかなか目にする機会がない半導体露光装置の模型や露光装置に使うレンズ、半導体ウエハーなどをニコンミュージアム(東京都港区)で展示している。日立ハイテクノロジーズやアルバックは小・中・高校生向けの理科教育支援活動や実験教室などを定期的に開催。キヤノンは半導体露光装置に興味のある大学生・大学院生向けインターンシップ(就業体験)で、工場見学や社員との座談会を実施している。

 SEMIジャパン(東京都千代田区)の浜島雅彦代表は業界の人材不足の解消には「若い人に、もっと業界を知ってもらうことが必要だ」と指摘する。優秀な人材獲得のためには売り上げに即座に直結しなくても、自社や業界に興味を持ってもらえるような地道な取り組みが今後も重要になりそうだ。
(文=福沢尚季)

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